家族にとって空白の時間が何年も流れた後、「船頭可愛や」のヒットを経て第11週「家族のうた」で、裕一の福島凱旋が描かれた。
時が経っていても裕一に対する浩二の怒りはすさまじく、「いっつも自分の感情ばっかで動きやがって。兄さんはな…もうとっくに家族じゃねえんだよ」と取り付く島もない。
そんな浩二の心を溶かしたのは、三郎だった。三郎は死の間際、「店継いでくれた時は、腹の底から嬉しかった」と、おそらく初めて浩二に素直な感謝の思いを打ち明け、「俺が死んだら、喪主はおめえだ。喜多一を継いだやつがこの家の主だ」と言い聞かせた。
長い間、浩二は「父に愛され、認められたい」という思いを抱えながらも、素直になれず生きてきた。そしてとうとう自分を認める父の言葉にふれ、救われた。裕一と浩二はその後、父の死をきっかけに、ようやく新たな関係性を築き始めた。
紆余曲折を経た古山兄弟だが、そうした展開も知った上で改めて第26回を見て驚くのは、十何年もかけてこじらせた浩二の負の感情の源が、この時すでにハッキリ声に出して語られていたのだということ。
父の愛を欲しているからこそ、兄に「まわりの愛を当たり前だと思うなよ!もっと感謝しろよ…」と言わずにいられなかった浩二。「気づいてよ!もっと俺にも関心持ってよ」の言葉は、兄だけでなく父にも向けられているとわかるし、「父さん、俺、家立て直そうと思ってんだ。わかってる?もっとわかってよ!」の言葉にも、愛情を求める響きがこもる。
今後、再放送では裕一と故郷との決別が描かれ、つらいシーンが続く。個人の夢よりも家業に重きを置くべきとされていた時代、「これだ!」と思う道を見つけてしまった人生の“負の側面”も、あらためてもう一度じっくり味わっていきたい。(文=ザテレビジョンドラマ部)
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