「エール」コロナ禍で再放送も“生きた副音声”で視聴者がっちり ドラマの新たな可能性示す

2020/09/01 11:08 配信

ドラマ

「エール」第24回場面写真 (C)NHK


“生きた副音声”の可能性


レギュラー放送時の「エール」の副音声解説は、声優の山崎健太郎が担当。聞き取りやすく理解しやすいよう、ドラマが大きく動く場面でも比較的安定したテンションで進行し、本編の会話やナレーションとの掛け合いもない。例えて言えば、声のいいお兄さんがお茶の間で一緒にドラマを見ながら補足説明してくれる、そんなイメージだ。

“視聴者目線で一緒に本編を楽しみながらトークを展開する”という意味では、今回いくつかの民放ドラマで試みられた、キャストによる対談・座談会形式のオーディオコメンタリーもこちらに近い。

対して、スペシャルバージョン解説では、明らかにその人物がドラマの世界観の中に存在している。

方言や英語混じりといったしゃべり方のクセに始まり、“キザキャラ”“ツッコミキャラ”などの個性、登場人物との関係性がそのまま副音声にも持ち込まれている。ときには当時の本人の心境を代弁したり、劇中の人物やナレーションにツッコミを入れるなど、姿は見えずともまるで本編に登場しているかのような存在感だ。

登場人物による副音声解説は、いわば“生きた副音声”。従来の副音声解説とオーディオコメンタリーの“いいとこ取り”として、ストーリーを知っている視聴者も新たな気持ちで楽しめる、画期的なアイデアだ。実際、視聴者からも「展開を知っているのに気になって見てしまう」「解説のキャラクターが変わるごとにロスになる」といった好評の声が続々と寄せられている。

コロナウイルス感染拡大により、テレビドラマ制作の現場を含めエンタメの分野を取り巻く環境は、様々な面で一変した。そんな中でもこうした新たなアイデアが生まれ、挑戦が続けられることからも、テレビマンの逞しさとエンタメの生命力をうかがい知ることができる。

エール」のスペシャルバージョン副音声つき再放送は9月12日(土)で終了し、9月14日(月)からは新エピソードの放送が再開する。今週分(8月31日~9月5日)の副音声には梶取恵(仲里依紗)が登場。残り少ない「エール」スペシャルバージョン副音声つき再放送を楽しみたい。(文=ザテレビジョンドラマ部)

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