コントやコント漫才を得意とする芸人がドラマや映画で俳優として活躍するケースは多い。
近いところでも、前述した「テセウスの船」のせいや(霜降り明星)が巧みな芝居で視聴者を驚かせたし、放送中の「半沢直樹」では角田晃広が“仕事のできない銀行員”を、児嶋一哉が得体の知れない存在感を見せる議員秘書を好演する。
単なる話題集めとしてではなく俳優としての役割を求められ、それぞれのキャラクターや持ち味を生かしてしっかりと役目を果たす“芸人俳優”たち。
岡部もまた、俳優として無二の存在感を放ち始めた注目の“芸人俳優”だ。岡部の魅力はその純朴さ。素朴な風貌、真っすぐな眼差し、明快でよく通る声。秋田県出身の岡部の身についた素朴な人柄も、演じるキャラクターにリアリティーを与える重要な要素だ。
「エール」の五郎は今後、梅とともに豊橋で暮らしながら、馬具職人としての道を歩き出す。馬具制作の所作は、師匠・岩城役の吉原光夫から習っているという。インタビューで「吉原さんの所作がとてもかっこいいんですよ。本物の師匠と弟子のように教えていただいています」と笑顔で語る姿は、もう岡部なのか五郎なのか分からなくなるほどだ。
「エール」は今後、太平洋戦争の時代へと突入していく。暗く、重く、つらいエピソードも描かれるであろう物語。岡部演じる五郎の温かな純朴さは、先の見えない時代のひと筋の光になってくれるのではないだろうか。初ドラマ出演にしてそんな期待を抱かせるほどに存在感を発揮する“俳優・岡部大”にこれからも注目していきたい。