<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「『面白い』を基盤から作る」【短期集中連載/第8回】

2020/10/12 19:30 配信

映画

キンコン西野の活動を語る上で外せない「シナジーマップ」


『えんとつ町のプペル』を支える西野亮廣の思想を具体化した「シナジーマップ」。宣伝もお金もすべてを掌握することで、壮大な作品作りを可能にした


僕は、「自分が手がけているプロジェクトが、他のプロジェクトに、それぞれどのような影響を与えているか?」を可視化した『シナジーマップ』を作っています。スケッチブック上に、今現在、自分が手掛けているプロジェクトを書き出し、それらを「AD(宣伝)」「ID(世界観)」「マネー」の矢印で結びます。

たとえば、僕は毎朝「ブログ」を書いています。この「ブログ」は「ビジネス書」や「オンライラインサロン」を宣伝する為にやっているので、ぞれぞれに「AD」という矢印が伸びます。「ブログ」での収益を目的としておらず、「ビジネス書」や「オンラインサロン」の宣伝を目的としているので、この時、何より大切なのは「こいつの言うことには嘘や誇張がない」という「信用」です。ということで、僕は「ブログ」から広告(バナー)を外しており、僕の「ブログ」が何百万人に読まれようが、僕には1円も入りません。そうすることによって、収益化を目的としている他所様のブログとは内容が大きく変わってきます。

「ビジネス書」は「オンラインサロン」を宣伝する為に書いているので、「ビジネス書」から「オンラインサロン」に「AD」という矢印が伸びます。収益を目的としておらず、かつ、一人でも多くの方に「ビジネス書」を読まれることが「オンラインサロン」の宣伝になるので、「ビジネス書」で発生した印税は全額「ビジネス書」の宣伝費に使います。収益のことだけ考えても、印税よりも、月額980円のオンラインサロンメンバーが増えた方が大きいわけですね。こうして「ビジネス書」で収益を作らなくても良い基盤を作ることで、競合との差を作ることができます。

「オンラインサロン」では、毎朝、現在進行形で僕が手掛けているプロジェクトの裏側を綴っております。毎朝2000文字〜3000文字ほど。僕の「オンラインサロン」は月額980円で、現在、会員数は7万1000人なので、「オンラインサロン」の年間売り上げは8億3000万円ほど。ここで生まれたお金は、サロン運営費(スタッフさんの給料を含む)を除いた全額を、エンタメ投資か、被災地や貧困国や子育て支援に回します。

絵本は「5000部売れればヒット」という世界。たとえば著者印税が10%だとして、1000円の絵本が5000部売れると(ヒットすると)、作者に入ってくる印税は50万円です。この印税はそのまま作者の生活費に回され消えてしまうので、制作費に回すことができません。まさか人を雇うことなどできません。したがって絵本作家は「制作費がかからない範囲での制作活動」を余儀なくされるわけですが、僕の「絵本」の制作費は「オンラインサロン」の売り上げから出ています。「オンラインサロン」から「絵本」に「マネー」の矢印が伸びているわけですね。これにより、「制作費がかかる絵本」の制作が可能になります。

作者が思い描いた世界の具現化に制限がかからない。この基盤を作ることが非常に重要だと考えています。

そこで作られた絵本が面白ければ面白いほど、その裏側(メイキング)に需要が発生するので「絵本」から「オンラインサロン」に「AD」の矢印が伸びます。そして僕の「絵本」は、それ単体での収益を目的としていないので、「絵本」の印税は全額「絵本」の宣伝費に回します。

そうして生まれた絵本『えんとつ町のプペル』からは、えんとつ町の世界観を再現したスナック「CANDY」や、音楽フェス「天才万博」や、レンタル会議室「ZIP」や、宿泊施設「頓堀宿泊室」や、「各地の個展」や「グッズ」に、「ID(世界観)」の矢印が伸びています。その世界観のファンは、それらの施設に足を運ぶので、「ID」と同時に「AD」の矢印も伸びています。

「CANDY」や「天才万博」や「ZIP」や「頓堀宿泊室」や、「各地の個展」や「グッズ」の制作の裏側は「オンラインサロン」で綴っているので、それぞれの施設から「オンラインサロン」に向けて「AD」の矢印が伸びています。どこにも矢印が伸びないプロジェクトや、どこからも矢印が伸ばされていないプロジェクトでは他者と差別化を図ることが難しいので、そういったプロジェクトは潔く畳む。こうして全ての活動を有機的に結ぶことによって、それぞれの活動の役割を明確化し、そこで発生したエネルギーを循環させ、無駄をなくし、圧倒的オリジナル作品を生み出す為の基盤を作ります。ここから作らないと『えんとつ町のプペル』なんて作れないんです。

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