時代によって戦争の描き方が変わる。確かにこの数年は戦争描写が控えめだった。振り返ると、「なつぞら」(2019年度前期)はヒロインなつ(広瀬すず)が戦災孤児になったところからはじまるが、そのきっかけである東京大空襲は、火のなか、母とつないだ手を離してしまいながら命からがら逃げてプールに飛び込むまでがアニメーションで描かれ、生々しさは少なめだった。
「スカーレット」(2019年度後期)と「ひよっこ」は戦争中や戦後の苦しさを登場人物が語りで聞かせる手法になり、「まんぷく」(2018年度後期)では、戦争のイメージがポスターなどの絵で描写するという工夫がされていた。主人公・福子(安藤サクラ)の夫・萬平(長谷川博己)が機銃掃射から逃げる場面は実際に撮影され臨場感があったが、戦後の話に重きが置かれている。近作は「とと姉ちゃん」(2016年度前期)や「べっぴんさん」(2016年度後期)の戦時中の描写は少ない。
クライマックスに向けて戦争が激化して主人公にのしかかってくるのは、その前の数年だ。「ごちそうさん」(2013年度後期)、「花子とアン」(2014年度前期)「マッサン」(2014年度後期)ではドラマの後半に戦争があり、ヒロインたちは苦悩する。
「ごちそうさん」ではヒロイン・め以子(杏)の息子(西畑大吾)が戦死、夫(東出昌大)も帰ってこない。生きているのか、死んでしまったのか……最終回ぎりぎりまで帰りを待ち続ける。
「花子とアン」はヒロイン花子(吉高由里子)が敵性語である英語の物語を密かに翻訳し続け、それが戦後、名作「赤毛のアン」になる。空襲のときに翻訳途中の原本を大事に抱えて逃げる場面が一話の冒頭に印象的に描かれている。
「マッサン」は「エール」と同じく男性主人公(玉山鉄二)だが、妻(シャーロット・ケイト・フォックス)が外国人で、彼女と娘(優希美青)が戦時中にはひどい差別に遭う。
このように主人公にふりかかる重しを必死でかいくぐり立ち上がって歩きだす姿が描かれたハードな世界が好きな視聴者と、そうではないライトなやわらかな世界が好きな視聴者と朝ドラファンは千差万別。作風が偏らないように配慮しているのであろうと感じる。戦争を描くか描かないか時代の流れでも変わることは興味深い。
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