池上彰推薦!津波3D映画が語る忘れてはいけない教訓

2015/03/10 11:27 配信

映画

東日本大震災のシンボルともなった宮城・気仙沼の第18共徳丸。解体されるまでを映し出す

NHKメディアテクノロジーが製作した3Dドキュメンタリー映画「大津波 3.11未来への記憶」が、3月21日(土)より順次全国の劇場で公開される。

ことしの3月11日(水)で東日本大震災の発生から4年目となるが、土地のかさ上げなどで津波に襲われた地域の風景は刻々と変ぼうしている。そんな中、未曽有の惨禍の記憶を風化させず未来へ語り継ぐことを目的に製作されたのがこの作品だ。

震災発生直後から3年余りの歳月をかけ、3Dカメラで定点観測することにより、カメラの前で語り始めた被災者と被災地の姿を丁寧に鮮明な映像で捉える。ナレーションは役所広司、朗読は山根基世

監督はNHK出身のドキュメンタリストで、ワルシャワ映画祭招待作品「天のしずく辰巳芳子“いのちのスープ”」などを手掛けた河邑厚徳氏。プロデューサーもNHK出身の智片通博氏が担当した。智片氏は阪神淡路大震災当時神戸で取材活動の陣頭指揮を取った経験を持つ。

この作品は、津波を直接体験した人たちによる5つの物語を中心につづられる。そこにあるのは、ビルの屋上に駆け上りほんの数cmの差で津波に飲み込まれることなく生き残った岩手・陸前高田の男性や、がれきの山を前に商店街の在りし日の姿を説明する宮城・気仙沼の酒店の店主、さらには震災直後に出航し津波のエネルギーにほんろうされた海上保安庁巡視船の乗組員らによる生々しい証言ばかり。特に、岩手・田老で被災したホテルのおかみの「津波からは逃げるしかないんです、戦っては駄目なんです」の言葉が胸に響く。

ジャーナリストの池上彰氏もこの作品を推薦。池上氏は「忘れたい。でも、忘れられない。忘れてはいけない。そんな被災者の思いを3Dで映像化。3Dという新たな技術によって表現できた世界がある。大自然に痛めつけられながらも、自然と共に生きる人々。ここに人間と自然との新たな営みがある」と、製作者の志と被災地に生きる人々の思いに強く共感する。