井上真央主演の大河ドラマ「花燃ゆ」(NHK総合ほか)で、最後の長州藩主となる毛利元徳(三浦貴大)の正室で、主人公・美和(井上)が仕える銀姫を演じる田中麗奈にインタビューを敢行。'12年の「平清盛」(NHK総合ほか)以来、2度目の大河ドラマ出演を果たした彼女に、革新的な銀姫のキャラクターや、共演者とのエピソードを語ってもらった。
――演じられている銀姫の人物像や魅力、美和との関係性についてどのように捉えていますか?
銀姫は情の厚い人ですが、それが“普段から、誰にでも通じるものではない”ということをわきまえているように感じます。でも、美和は人の思いや情を大切にする人ということで、銀姫はそういう部分に引かれたのではないかと思います。
だからこそ、美和とのやりとりは大切にしたいですね。関係性は日々更新されていて、美和に助けられることも多いのですが、銀姫もよく美和を助けていて「優しいな」と感じます。
もちろん美和だけではなくて、ほかの女中のこともかばったり、守ったりするんですよね。そういうところに魅力を感じています。
――個性的で革新的な人物として描かれていますが、銀姫のそういった部分をどう感じますか?
銀姫は、人をとても公平に見ているのだと思います。それが、しきたりを大事にする都美姫(松坂慶子)や女中たちを驚かせるんでしょうね。その意味で、銀姫は次世代を感じさせる役柄です。しきたりとか慣習といったものだけにとらわれない、ということを彼女は大切にしていると思います。
――そんな銀姫に共感することや憧れを感じることはありますか?
銀姫には、いろんなことを考えて、自分の立場もうまく使える賢さがあるように感じます。プライドとか小さいことにとらわれず、「じゃあ私がやろう」と切り込んでいく。勇気もあるし、それに情もあって「かっこいいな」と憧れる部分はあります。
――銀姫を演じる上での苦労はありますか?
言葉遣いは、やはり難しいですね。銀姫だからということではなく、時代劇のせりふ回しなので。ちょっとしたフォローやアドリブを入れる場面でも、現代の言葉遣いになってはいけないので気を使います。
――銀姫のせりふで印象に残っているものはありますか?
美和に「そのように懐かしく温かいものを、何より大事に思うそなただからこそ――私はお前を信じた」と言うせりふがあって。「ここまでよう尽くしてくれました」と続くのですが、とても好きなせりふですね。
「やっぱり美和のことを、そういうふうに感じていたんだ」と思いました。銀姫自身も美和という生き方に憧れていただろうし、美和から教えてもらったものは、そういう懐かしさ、温かさを大事にする生き方だったのだなと。すてきなせりふだと思います。
――一方、“大奥編”では、銀姫と都美姫の静かな戦いが見どころでもありますが、松坂慶子さんと共演して、どんなご印象を持たれましたか?
松坂さんの貫録あるお芝居を味わえるのは光栄なことだと思っています。よく「姫!」と怒られたりもするんですが、それもまた快感で(笑)。でも、やっぱり銀姫は言うことを聞かないんですよね。それもまたすごいなと思いますね。
でも、二人の戦いは“気持ちのいい戦い”だと思いますね。もちろん、お互い思うところはあるのですが、二人とも陰でコソコソするタイプではないんですよね。だから、とても健康的に争っていると感じます(笑)。
――今後、ここに注目してほしいというシーンはありますか?
都美姫と銀姫と美和の3人が近くにいると、すごくわくわくするんですよね。美和はまだ女中としては下の方なので、3人が一緒のシーンでは、美和だけ姫たちから遠いところにいるんです。銀姫と二人のときは少しずつ距離が近くなっていますが、都美姫がいるときは、美和が近くに来ることはあり得ないんです。
それが、昨日撮影したシーンでは違っていて。ある事情で美和が奥御殿を離れるのですが、美和の姿がないのに気付いた都美姫が大騒ぎするんです。事情を知っている銀姫は「いませんよ」と答えるのですが、そこに美和が戻ってくるんです。そこで、3人がとても近くにいる、というなかなかないシチュエーションになりました。
私は「美和がいつの間にか奥の中心になっている」「美和にみんな引き込まれてしまっている」と思って、なんだかうれしかったです。あらためて“奥の美和が誕生した”というシーンだと思うので、楽しみにしてほしいです。
――“大奥編”ということで、女性ばかりの現場だと思いますが「この現場ならではだな」と思ったことはありますか?
美容の話で盛り上がります。「化粧水は何を使ってる?乳液は?」とか。そういった話にはしゃいでいる自分がいて、「あ、これは女性ばかりの現場ならではだ!」と思いましたね。
――夫婦役を演じる三浦貴大さん(毛利元徳役)が、田中さんのことを「とてもすてきな方」とおっしゃっていましたが、田中さんは三浦さんにどういった印象をお持ちですか?
(褒め方が)ざっくりしていて信じられないです(笑)。三浦さんとは、二人のシーンがあったときにいろいろとお話ができました。共演は初めてだったんですが、三浦さんのデビュー作の映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」('10年)が好きだったので、「あれ良かったよね!」と盛り上がりました。
三浦さんは“とても温かみのある人”という印象があるので、「この人(元徳)を好きになって大切に思っている」ということで、銀姫が(視聴者に)信用されるというか、なんとなく人物像が伝わるような気がします。
――元徳というキャラクターについてはどんな印象をお持ちですか?
銀姫の性格をよく知っていて寛大ですよね。口数は少なくて、銀姫をすごく自由にさせていますが、大切なところでちゃんと前に出たり、銀姫の知らないところで心配していたりと理想的な旦那さんではないでしょうか。
――今後、元徳との間に子ができて、銀姫は母親になるわけですが、そんな銀姫をどのように演じていこうと思っていますか?
出産を経て、銀姫が徐々に丸く柔らかく、女性的になっていけたらいいなと思います。もちろん、都美姫に対しての態度も変わってきますし、そういうところで変化を見せていけたらと思います。
ただ、あくまで銀姫なので丸くなりすぎて普通の人になったら、つまらないし物足りないと思うので、彼女が本来持っている明るさや遊び心は入れていきたいですね。そうしたら、彼女ならではの母親像というものができてくるのではないかと思って、模索している最中です。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)