「武士の家計簿」の磯田道史が、司馬遼太郎作品を語る

2016/02/23 06:00 配信

芸能一般

3月の「100分de名著 司馬遼太郎スペシャル」の講師役を務める歴史学者の磯田道史(C)NHK

3月2日(水)から始まる「100分de名著 司馬遼太郎スペシャル」(NHK Eテレ)の放送を記念し、番組の指南役である歴史学者の磯田道史氏と番組プロデューサーの秋満吉彦氏が取材に応じた。

古今東西の名著を25分×4回の計100分で紹介する「100分de名著」。'11年の放送開始から取り扱ってきた名著は50冊を超え、3月には没後20年のタイミングで作家・司馬遼太郎を特集する。

司馬遼太郎スペシャルでは、司馬作品「国盗り物語」「花神」「『明治』という国家」「この国のかたち」を各回1冊ずつ深掘りしていく。

自身も作家として「武士の家計簿―」(新潮新書)などを出版している磯田氏は、司馬遼太郎について「司馬さんは僕が最も会いたいけれど会えない人の一人」と明かし、「司馬さんは回想録を非常にうまく使った描き方をする。史実の抜き出し方が上手なんです。僕も描きたいなと思っていると司馬さんが既に使っていることが多いですね」とコメント。

さらに「(司馬作品は)本当によくできています。僕はよく司馬さんの本を魚の“鮎”に例えるんですよ。はらわたの部分を抜いて誰でも食べやすいようにありがたく料理してある。史実には苦い部分もあるし、食べにくい部分もあるけれど。その除去したはらわたが本当は何だったのかを考えながら読むといいですね」と磯田氏は独自の表現で司馬の魅力を語った。

また、若い人に薦める司馬作品について「小説が好きな人には『花神』ですかね。それから、読むだけ読んでためになるのは『この国のかたち』ですね」と2冊を選出。

秋満プロデューサーは「打ち合わせで磯田さんは(司馬遼太郎の)最高傑作として『花神』の名前を挙げていました」と告白。これに対し磯田氏は「日本社会の普遍的なものが『花神』の中には描かれています」と話した。

最後に「若い世代の人たちは歴史を『好き』だとか『趣味』だとかの言い方をするけれど、歴史は実用品なんです。歴史は、生きる上で本当に役に立つんです」とアピールした。

磯田氏の解説によって、日本人の精神性の深さを描きだしてきた司馬遼太郎作品の「日本とは何か」「歴史における人間の役割とは何か」という問いの答えが解き明かされていく。

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