中村義洋監督“利息”は「なかなか出会えない作品」

2016/05/13 10:00 配信

映画

「殿、利息でござる!」のメガホンを取る中村義洋監督

5月14日(土)より全国ロードショーされる阿部サダヲ主演映画「殿、利息でござる!」。

実話を基にした本作でメガホンを取るのは、「アヒルと鴨のコインロッカー」(‘07年)や「ゴールデンスランバー」(‘10年)などで知られる中村義洋監督だ。

中村監督が本作を映画化しようと思ったきっかけや、こだわりのキャストについて、作品の見どころについてインタビューを行った。

――そもそもこの映画を企画したきっかけは何でしょうか?

東日本放送(KHB)と僕でドラマを作りましょうという話を、4年くらい前からしていたのが始まりです。東日本放送はドラマ部門がないテレビ局なのですが、震災後5年後くらいを目安に公開される映画を撮ろうと話していました。

その時期ならこういう作品をやりましょうか、と構想が決まっていたのですが、動きだすギリギリでこの原作を知ってしまったんです。それで急に「これしかない!」となって。僕自身も「これだ!」と文句なく言える作品にはなかなか出会えないので、即決でした。そういう作品とめぐり会ったのは「アヒルと鴨のコインロッカー」以来かもしれません。それから、松竹に話を持って行って実現へ動きました。

――最初から時代劇にしようと思っていたのですか?

いえ、最初は時代劇をやろうと思っていなかったです。もともと時代劇は大好きで、テレビでも映画でも好きで見ていましたし、小説とかも読んでいたので、時代劇をやることに対する抵抗というか、意気込みは他の監督と比べたらハードルが低かったかもしれません。

それに、僕の場合は手前味噌ですけど、時代モノでも脚本をすんなり書けちゃうので。池波正太郎の時代小説とかを日常的に読んでいたので、自然と会話も書けちゃいますから。その時代はそういう単語はない、などと単語のNGは食らいましたけど、語尾とか言葉づかいは自然と書けたので、あまり抵抗はなかったですね。撮り方も全然変わりませんしね(笑)。

――監督は「ここぞ!」という場合、出てほしいキャストがいるとおっしゃられていましたが、今回のキャストは「ここぞ!」ですか?

ええ、今回は「ここぞ!」と思いました。なかなか出会えない原作ですし、自分から発信している映画ですから。出版社に権利を取りに行ったのも僕なので。大事にしたいから、ある程度予算がないと、というのは頭にありましたが…。

今回出てくれた妻夫木聡君は、5、6年前からずっとご一緒したかったんですが、なかなか実現しなかったので、うれしいですね。あとは、瑛太君も「アヒルと鴨―」からの付き合いだったのですが、彼ほどの役者ですからいい作品に出合うまでちょっと待っていたところはありました。大事なやつでは絶対に声を掛けたいなとずっと思っていて、今回お声掛けしました。

――原作の魅力はどういったところにあったのでしょうか。

地位や名声が全てじゃない、というところですね。僕も本当は自分の生き方としてこういうふうに生きたいんですよ。縁の下の力持ちというか、人知れず何かを頑張って、別に名前を売りたいとか、褒められたくてやるわけじゃない、という風に。だったら監督じゃなくて別にスタッフのどこのポジションだっていいんだろうけど、なぜか監督をやっているので、結局僕は名前を売りたいんですかね(笑)。

――目指すところとは裏腹に(笑)。

そうそう、裏腹なんですよ(笑)。でも、何もやっていないのに俺が!俺が!って名前を出そうとする人って世の中にいっぱいいますよね。プロデューサーとかに多いですよ(笑)。

――そんな中で主人公の阿部さんは「志村喬さんのような感じで演じて!」と言われたそうですが?

ええ、たまたま僕以外にも過去にそう言われた作品があったみたいで「またか!」とゾッとしていましたよ。

――主人公の阿部さんは最初からああしようと考えていました?

いや、揺れましたね、大分揺れました。原作では、途中から出なくなっちゃったので、どうしようか試行錯誤して。黒沢明の「生きる」の後半の、自分の死を知っちゃった人が、捨て身でダメだと言われても当たっていくイメージで、サダヲさんにあの表情をやってほしいと注文しました。

――テーマ的には、シリアスに描こうと思えばいくらでも描けると思いますが、笑いを取り入れていこうと思ったのはなぜでしょう?

まず、この作品はどんなジャンルなのか、ということで。仕上がったのは完全にコメディーですが、最初この話をやると決めたとき、松竹に話を持って行ったんです。ぶっちゃけ、そのときに先方から「コメディーですね」と言い切られちゃったんですよ。食い下がったんですけど「いや、コメディーです」って言い切られちゃって(笑)。

でも前に「ジェネラル・ルージュの凱旋」('09年)って映画をやって、救命救急の取材をしたときに、これをどうにかして世の中に伝えないといけないと思ったのを思い出したんですよ。真実を伝えるためには、シリアスにいくだけではなく、「エンタメで伝える」ということが大事なのだなと。なので、コメディーで見せながら大事なことを伝えるというのが、自分の狙っていることと合うんじゃないかと思い始めて、コメディーにしました。

――既に大反響が寄せられていますが、羽生結弦選手の演技も自然ですね!

良かったですよね。僕からのアドバイスは特にないんですが、緊張すると芝居が駄目になるんで、緊張しないためにはどうするかというような話はしました。実は声のトーンから立ち居振る舞いに至るまで、特に具体的な指示はしていません。

――演出されてみて、勘がいいなどと思いましたか?

それは思いました。それに、衣装合わせのときに「首長いな~!」って思いました(笑)。すごいな、やはりアスリートだなあと。

――では、最後に見どころをお願いします。

原作もそうですが、儲けも名声もなく、ただ村の事を考えた男たちがいたということで貫かれている作品です。豪華な俳優さんを呼んでやっているからには、自分がこうしたいというより、俳優さんが2人なり3人なりでお芝居するときのやりとりの間合いが楽しいんじゃないかという気がしています。

押し付けがましくするのではなく、あまり深みを持たせるわけでもなく、当時生きた人たち“ありのままの姿”を描いている作品ですので、最後までぜひご覧になってください。こんな人がいたんだなと、生きる上での新たな指針になれば幸いです。どうぞよろしくお願いします。