堺雅人が真田信繁(幸村)を演じる放送中の大河ドラマ「真田丸」(NHK総合ほか)。ダイナミックな戦国絵巻でありながら、真田家の“家族の物語”を描く同作で、信繁の兄・信幸(大泉洋)の妻・こうが注目を集めている。病弱なこうだが、婚礼の席で突然踊り出すなど思わぬ言動でたびたび笑いを誘ってきた。
しかし、5月15日放送では、信幸が徳川方の武将・本多忠勝(藤岡弘、)の娘・稲(吉田羊)と政略結婚することに。次回、5月22日(日)放送の第20回では、こうは、信幸から離縁を切り出される。
そんな、こう役の長野里美を直撃し、個性的な真田家の面々の中でも特に“濃い”役柄と、信幸との離縁について聞いた。
――最初、こうはどのような役柄だと説明を受けましたか?
プロデューサー陣からは、「信幸を支えて真田家を盛り立てようと、病弱ながらも頑張っている女性を演じてください」と言われました。三谷(幸喜)さんは「病弱なんだけど少し自分に酔っている、悲劇のヒロインタイプ」だとおっしゃっていて(笑)。「笑えるくらい負のオーラをまき散らしていながら、憎めなくてかわいい、チャーミングな女性を演じてください」と三谷さんの持っているイメージを頂きました。
ただ、初登場が第3回(1月24日放送)でしたが、シーンが台本1ページにも満たなくて、せりふは二言三言ですし、すぐせき込んでしまうという中で、それだけたくさんのことをどう表現するかというのは悩みました。三谷さんに相談したら、志村けんさんのコントを参考にしてみてくださいと言われました。しばらく研究してみましたが収集がつかなくなり、最終的に志村さんのイメージは捨てたのですが、体のどこかに残っていたみたいで、ネットをちらっと見たら「志村けんみたい」と書かれていました。少し複雑な気持ちになりました(笑)。
――台本を読まれて長野さんご自身は、こうをどのようなキャラクターとして捉えていますか?
こうは、出自を含めて実在していたことは分かっているのですが、詳しいことは分からないんです。でも、そんな存在を三谷さんやプロデューサーが見つけてくれて、三谷さんは「これは発見だ」と思って膨らませてくれたらしいんですね。病弱なのは、後に信幸の妻になる小松姫(稲)との対比で生まれた設定だと思いますが、「ただの病弱では面白くないな」と思ったのか、あんなことに…(笑)。
もともと、「真田家の役に立ちたい」という気持ちは人一倍強いと思うんです。おそらく、結婚してすぐに子供ができなかったことで自分を責める部分があって、それで病気がちになったのかなと想像しています。でも、病気になったことで自己アピールが強くなったのかもしれませんね。信幸が一生懸命「頼りたい」とか「甘えたい」といったオーラを出しているときも、話を聞いていなくて、口元にできものか何かを作ったのを「見てください」って言っていたり…私が男だったら「何なんだ、この女」と思いますよ(笑)。
――ここまでで特に印象的だったのが、信繁の婚礼で披露した“雁金踊り”です。撮影中のエピソードを教えてください。
あのシーンは、全員が盛り上がっていたので、私もテンションが上がってしまいまして…。踊りながら、自分でおかしくて吹いてしまったんですね。堺さんの方に向かって踊っていたのですが、カメラの向きを見て「これは大丈夫だ」と思って吹いたまま踊っていたら、堺さんも笑いをこらえるのに必死そうでしたね。
でも、「信繁を引き止めろ」と言われたときは、うれしかったと思いますね。とにかく役に立ちたい人だから、何かを命じられると燃えると思います。
――そんなこうですが、第20回では信幸に離縁を切り出されてしまいます。台本を読んだ時のご感想はいかがでしたか?
一度、信幸の元を離れるのですが、直後に驚きの展開があって。正直に言って、興奮しました。「こうに、こんなドラマが書かれるなんて…」と演じる役者としてうれしかったです。大泉さんは「どう受け止めていいか分からない」とおっしゃっていましたけど(笑)。
離縁によって、こうの立場はガラッと変わるのですが、それをきっかけに彼女のアイデンティティーが明確になったと思います。これまでの、子供も産めなくて、嫁としての仕事もできない…というときよりも精神的に楽になったのではないでしょうか。
――離縁を経て、こうのキャラクターはどのように変わっていくのでしょうか?
転がるように変わっていきますね。役割を与えられたことで活気づいたというか。これまでダメだった人が、こんなふうに人を叱ったり勇気づけたりできるようになるのかと驚いています。顔つきや動作も変わっていますし、最初と最後では別人のようだと思います。
――その変遷を演じる上で、どんなことを意識していますか?
病弱な人が元気になるというと、存在感を増す方向に捉えられがちだと思いますが、むしろ、私自身は逆に感じているんです。“病弱な人”を演じるのは初めてで、核を作って演じていかないとできないものでした。つまり、私の中で、こうの存在は濃いものだったんですね。それが元気な普通の人になっていくというのは、こうにとっての成長ではあるのですが、それによって彼女の存在感が薄まるのは避けたいなと思っています。とはいえ、ずっと変な人であり続けるのも困るので、さじ加減を探っているところですね(笑)。
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