尾野真千子“フジコ”は「演じていてつらかった」

2016/06/08 18:47 配信

ドラマ

Huluオリジナル連続ドラマ「フジコ」で主演を務める尾野真千子(C)HJホールディングス/共同テレビジョン

オンライン動画配信サービス「Hulu」のオリジナルドラマ「フジコ」が、一般社団法人全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が優れた作品を選ぶATP賞テレビグランプリの「特別賞・非放送系コンテンツ部門」を受賞したことが6月8日、分かった。なお、授賞式は7月8日(金)に東京・六本木ハリウッドホールで開催される。

「フジコ」は、Huluオリジナル制作の連続ドラマとして、'15年11月13日からHuluで配信を開始した作品。映像化不可能と言われた“イヤミス”の名手・真梨幸子の65万部を超える大ベストセラー「殺人鬼フジコの衝動」をドラマ化したもの。

主人公の殺人鬼役に尾野真千子、その他に谷村美月丸山智己高橋努リリー・フランキー浅田美代子真野響子らが脇を固めた。

尾野の代表作になり得るこのドラマは、配信作品ならではの地上波とは違う魅力を放つ異色作。“聖域”を侵しかねない映像表現と新たな可能性を模索するチャレンジ精神で、ドラマの枠を超え、至高の映像作品へと押し上げた。

主演の尾野は「最初、台本を読んだ時『殺人はあってはならない悪いもの』という思いから断りたいと思いました。台本の読後感が『むごい、ひどい、つらい』の三拍子で、とてもひどかったからです。正直、こんな衝撃的な役どころから自分を守りたいと思いました。

そんなとき『凶悪』(脚本の高橋泉が日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した映画)を見て、『できるかもしれない』と思いました。それでも不安が取れないまま撮影に入り、決して納得して演じたわけではなかったのですが、つくり手の誠実さに賭けました。一言だけで片付けられない、人間の深部に問い掛けてくれる部分があるドラマだから、ふんぎりをつけ、受け入れ、チャレンジするように飛び込むことができました」と振り返った。

また、自身が演じたフジコについては「客観的に見て狂気そのものでひどい女性ですし、一方でかわいそうだとも思いました。この女性はいつ幸せだったのだろうと思いました。フジコなりの幸せは時々あるようでしたが、私たちから見るとかわいそうな人。殺人への衝動の飛躍がすご過ぎるし、最後まで共感は一切できませんでした。フジコより他の人がかわいそうでした。私なりの解釈でこの破滅的な女性を演じ切りましたが、演じていてとてもつらかったです」と分析を交え、演じた感想を明かす。

ただ、演じた達成感もあるようで「起伏の激しい平常心でいられない役柄でしたので、とても疲れました。疲労感がすさまじかったです。私にとっては、それだけ全身全霊で入り込めた役ということです。どうなるんだろう、狂気しかないんじゃないかと不安が90%でしたが、完成したものを見てみると、人の痛みも分かりますし、響くものがいっぱいあり、実は泣けました。やってよかったなとやっと思える作品です」と、振り返った。

一方、原作の真梨は受賞を受けて「『原作よりも面白いものを作っていただけるなら、どうぞお好きにしてください!』と丸投げして、足掛け2年。出来上がった作品は、見事に原作以上のものでした。

原作者であることも忘れ、どっぷりと作品にハマり、頭がおかしくなるほどに続きが気になって仕方がありませんでした。そして、ラスト。気が付けば号泣していました。このようなドラマ経験は、本当に久しぶりでした。心の底から、ありがとうございました」と、コメントを寄せた。

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