宮藤官九郎「“ゆとり世代”を描いていたら社会派ドラマに」

2016/08/10 12:00 配信

ドラマ

「ゆとりですがなにか」を手掛けた宮藤官九郎が、第89回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞・最優秀脚本賞に輝いた撮影=宮川朋久

'16年4月クールに放送されたドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)の脚本を手掛けた宮藤官九郎が、第89回ザテレビジョン ドラマアカデミー賞において最優秀脚本賞を獲得。「宮藤官九郎にしては社会派」「社会問題を描いているけど笑わせてくれる、絶妙」など、新たな一面を見せつけた宮藤官九郎にドラマ制作の話を聞いた。

――ゆとりを題材にしていましたが、社会問題がふんだんに盛り込まれた内容でした。

もともとは「叱られたことのない若いゆとり世代の主人公が、自分より下の世代の社員に初めて怒ったらパワハラで訴えられる」という話だったんです。その時点で、ゆとり以外にもパワハラという要素が入っていた。最初から社会派ドラマをやろうと思っていたわけではなくて、“ゆとり世代”を描くということは、結局、今、社会で、皆さんの周囲で起こっていることはどうしても入ってきちゃうなと。だから今現実に起こっていることをそのままドラマにするっていう感じでしたね。その中でやっぱり、人は人でつながるというのをドラマで見せられたらなっていう思いはありました。

――以前の取材で「この作品は自分にとってチャレンジ」とおっしゃっていました。

初めて一緒に仕事する方が多かったので、役者さんの魅力をどういうふうに自分がまず気が付いて、その魅力をどういうふうに伝えれば面白く伝わるかっていうのと、どういうふうに描いたら本人たちがノッて演じれるかっていうのを考えていました。あと、強いていうならもう1話分時間が欲しかったっていうのはありますけど(笑)。全体的に僕が書く台本は長くて、本来の時間でいうと1話につき10分くらい長いんですよね。ということはあと1話分の時間があったら、そんなに長さのことを気にしないで展開できたのかなとも思うんです。特に第6話ぐらいまでは何も考えずにやろうと思っていたことを順番に書いていったらできた。でもその時点で、第6話までのことをまとめるまでにあと4話必要だなって。これ以上新しいことは何もできないや、ここまでやったことを収束させるだけになっちゃうなと思って、その部分は苦労しました。連続ドラマってまとめなければいけないのが難しいですよね(笑)。もう少しぶった斬っても良かった部分があったなとか思ったり。

――登場人物がみんな際立っていましたが、特に思い入れのあるキャラはありますか?

みんな思い入れがありますが、自分で書いてて新しいなって思ったのは山岸かな。太賀くんがすごくうまくやってくれたから成立させることができましたけど、第3、4話くらいまでの山岸は「早くコイツいなくなれ」みたいな感じにあえてやっていたんですよ。今までの作品の中では、「コイツ実はいいところあるぞ」みたいな描き方していたんですけど、山岸はそういうのはなくして、あからさまな敵にしたいなと(笑)。でも、それは何というか、いつ次またパワハラで訴えるか分からないぞみたいな、不安定な感じ。人はそんな簡単に心を入れ替えないし、そんな簡単に変わらないけど、実際はそんな悪いやつばかりじゃないぞと。その結果、キャラクターとしてはすごく面白かったかなと思います。

――最後にゆとり世代へメッセージをいただけますか?

取材をしながらドラマを描いて思ったんですけど、ゆとり世代じゃなくても社会に出たら一回つまずくんですよね。自分のダメさや小ささとか、そういうのにくじけるんですけど、その時の言い訳の言葉がたまたま「ゆとり」だっただけの気がするんです。ドラマのセリフにもありますけど、次の若い世代が来たときに脅威というか怖いというときに、上の世代の人たちがカテゴライズするためにある言葉だとも思います。だからそういう意味では、「ゆとり世代」って言葉に意味はないんじゃないかなと、やっと分かりました。なので、皆さん気にしないでください(笑)。

くどう・かんくろう='70年7月19日生まれ。監督・脚本を手掛けた映画「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」が公開中。映画「ピース オブ ケイク」や「バクマン。」(共に'15年)などで俳優としても活躍。作・演出・出演の舞台「大パルコ人(3)ステキロックオペラ『サンバイザー兄弟』」が11~12月に公演。