9月10日公開の映画「四月は君の嘘」。ヒューマン・メトロノームともいわれる天才ピアニスト・有馬公生(山崎賢人)が、母の死と、そのショックからピアノの音が聞こえなくなるというWの悲劇に見舞われる。高校2年生になった4月のある日、公生は幼なじみの澤部椿(石井杏奈)と渡亮太(中川大志)に誘われ、勝気で自由奔放なヴァイオリニスト・宮園かをり(広瀬すず)と出会う。かをりの楽しげな演奏をきっかけに再びピアノ、そして“母との思い出”と向き合う決心をする公生だったが、かをりにはある秘密があって…というストーリー。本作品にとって、音楽は欠かせない要素だ。
広瀬すず・山崎賢人がそれぞれヴァイオリン、ピアノの演奏に初挑戦したことでも話題の本作品。2人の楽器習得までの裏話を八尾香澄プロデューサーに聞いた。
広瀬&山崎が楽器の練習をスタートしたのはクランクインの半年前。まだ2人がそれぞれ別作品に携わっているタイミングだった。
「止まっていた公生の時間を動かすきっかけが、かをりのヴァイオリンの演奏であり、そしてまた公生のピアノ演奏が、今度はかをりを突き動かしていく…という物語。いわば『音楽』そのものがもうひとつの主役です。演奏シーンには、圧倒的な説得力が必要でした。とにかく音楽シーンで勝負したいとお伝えし、練習に励んでもらいました」(八尾P)
演奏シーンでは、映画撮影ならではの苦労も。
「プロの演奏会でも2時間とか3時間ぐらいですが、映画の撮影現場は全く違います。例えば6分の曲でも、映画の撮影では200カットとか膨大なカット数があり、それを3日間とかかけて撮影します。演奏する二人は基本、弾きっぱなしに近い状態。精神的にも肉体的にも大変だったと思います」と八尾P。
かをりの“自由奔放”な部分が見えるように、広瀬には演奏中に身体を大きく揺らす演出も。一方、山崎演じる公生は、ピアノを弾く最中に音が聞こえなくなって不安に押しつぶされそうになる、など演奏シーンにも感情が色濃く表れる。「すずちゃんは、演奏にかをりの意志の強さを感じさせなければいけない。山崎くんは、正確に演奏しながら感情の乱れを出していかなければならない。どうしてそれができてしまうのか不思議なくらい、二人とも凄まじかったです」
「正直に言うと、練習がはじまってしばらくは、ずっと不安でした」と明かす八尾P。山崎、広瀬ともに猛練習は重ねているものの、曲数も多く、1曲1曲も長いなど、超えるべきハードルは高い。「本番まで全楽曲が間に合うのか、どのぐらいのペースで練習をすべきなのか、探り探り進めていきました」
そのムードが打破されたのは、クランクイン直前の昨年10月上旬。「ふと気づくと2人とも、複雑なメロディーを口ずさんでいて。完全に曲が頭に入ってたな、と安心しました」。撮影が始まると、2人とも本番を重ねるごとに格段に成長していった。「これが俳優の底力かと感動しつつ、この作品はすごいものになる、という手応えを感じました」
八尾Pも目を見張る成長を見せた2人。それぞれに感じた“演奏家の素質”について聞くと、「すずちゃんは、まず音感の良さ。それから、持ち前の運動神経と集中力の高さ、ストイックなまでに反復練習を続けるプロ根性ですね。山崎さんは音楽好きということもあり、とにかくリズム感が良かったです。そして、大変な中でも楽しい部分を見つけて伸ばしていくタイプでしたね」と八尾P。
作品で重要な役割を担う「愛の悲しみ」(クライスラー作曲)などは特にピアノパートが複雑だが、山崎は飲み込みの早さと瞬発力の高さで、きちんと自分のものにしていった。
演奏シーンには、2人の俳優の“化学反応”が色濃く表れた。撮影中には、互いが刺激となって予想を超えるパフォーマンスが生まれたことも。
「事前に『ここは難しいから諦めよう』とか、先生から『ここはできないと思います』と言われていたところが、なぜか本番できたりするんです。すずちゃんがノーミスで完璧にヴァイオリン演奏をし、それに触発されたように山崎くんが練習を上回る演奏をする。何なんだ、この二人は!と思わず抱きしめたくなるくらい嬉しい瞬間でしたし、モニターを見ながら自然と涙が流れるような奇跡が何度も起きました」(八尾P)。
本気でステージでぶつかり合った2人。納得のいかない演奏や芝居には、「すみません、もう1回やらせてください」と監督にリクエストすることもあったという。
広瀬&山崎の本気のぶつかり合いが見られる演奏シーンにも期待!
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)