「真田丸」“刑部の介錯人”は愛之助の愛弟子!

2016/09/17 11:00 配信

ドラマ インタビュー

湯浅五助を演じる片岡愛一郎を直撃!(C)NHK

大河ドラマ「真田丸」(NHK総合ほか)9月18日(日)放送では、石田三成(山本耕史)と大谷吉継(片岡愛之助)の最期が描かれる。前回放送では、佐助(藤井隆)の報告の中で三成の敗走と吉継の戦死が語られたが、今回はどのように死を迎えたかが回想の形で明かされる。

その中で、切腹する吉継に命じられて介錯(かいしゃく)を務め、その首をはねる家臣・湯浅五助を演じる片岡愛一郎を直撃。愛之助の弟子として常に行動を共にする彼は、愛之助がドラマ「半沢直樹」(’13年、TBS系)でオネエ口調の国税庁検査官・黒崎駿一を演じた際、役作りの参考にしたという人物。

そんな愛一郎に、大河初出演の感想と、“若旦那”と呼んで慕う愛之助の介錯人という大役について聞いた。

――まずは、湯浅五助役での出演が決まった経緯を教えてください。

詳しくは僕も知らなかったのですが、前から愛之助若旦那が、三谷(幸喜)さんと「(愛一郎にも)出番があったらうれしいです」と話してくれていたそうです。そうしたら、後になって三谷さんから若旦那に「愛一郎さん、出してもいいですか」と連絡をいただいて、吉継の家臣役を務めさせていただくことになりました。

歌舞伎以外では実在した人物を演じるのは初めてですし、器用な方ではないので、出演者の皆さんのレベルに到達するのは難しいかと思いますが、なんとか近づけるよう努力しようと思って演じています。

――愛之助さんの家臣という立場ですが、五助役についてはどのように感じましたか?

正直に言って驚きました。実は、愛之助若旦那と一緒に大谷刑部(吉継)のお墓に行ったのですが、隣に湯浅五助のお墓があったんです。それを見て、「こういったお役は、有名な方がされるのだろうな」と思いながら、撮影中の若旦那の無事を祈っていたのですが、まさか自分が演じさせていただくことになるとは思ってもみなくて、今でも驚いています。

――五助にとって吉継はどんな主だったと思って演じていますか?

吉継と五助の主従関係や、五助の主を思う気持ちというのは、若旦那と自分の関係とリンクする部分があると思って演じています。僕は結局、吉継と言いながら若旦那を見ているので、上司であり師匠であり、すごく大切な存在で守るべき人というふうに見ています。

――普段の愛之助さんは、愛一郎さんから見てどんな方ですか?

お芝居に関してはすごく厳しいですが、普段は自分から場を盛り上げてくれる方です。師匠と弟子という関係ではありますが、よく笑わせていただいています。舞台・撮影・移動と一緒にいる時間は多いですが、いつも自分のことより人のことを考える方だなと思います。

――これまでの作品と今回の「真田丸」で、愛之助さんの演じ方や取り組まれ方の違いは感じましたか?

いつもは、(役に)若旦那自身と近い部分がある程度あるように思うのですが、今回の吉継は普段と違って近寄りがたい雰囲気があると感じました。一緒のシーンがあったときに、楽屋までは普段の若旦那でしたが、撮影に入った瞬間に別人のように思えました。

「いつもの感じじゃない…」と思って、それだけに自分の居場所がないような気がしました。ですが、それで「そうか。この人はもう吉継なのだから、僕もいつまでも愛一郎になっていてはいけない」とも思いました。

――9月18日(日)放送では吉継が切腹。五助はそれを介錯する立場ですが、撮影を前にしてどんなお気持ちですか?

ものすごく緊張しています。皆さんから「どうするの?」と聞かれるのですが、どうしたらいいんだろう、と。

自分が大切に思っている人を自分の手にかけるというのはつらいことだなと思います。とても悲しいけれど、忠義を尽くさないといけないという五助の思いを、たった一言のせりふで表現するシーンですから、考えれば考えるほど恐ろしい。とても貴重な経験をさせていただいているんだなと思います。

――愛之助さんとはお話をされましたか?

「とにかく、俺の首を敵に取られないように、という一心でやってください。絶対に逃げ延びるという気持ちで」と言われて、「はい、はい」とただうなずくばかりでした。

――しかし、直前の9月10日放送では、吉継が死んだという事実は佐助の報告の中で明かされました。“超高速関ヶ原”とも呼ばれましたが、この台本を読んだときはどう思いましたか。

僕もびっくりしたんですよ、「え、1行!?」と思って。ただ、驚きつつ、五助が介錯するシーンはないのかと思って、少し緊張がほぐれました。「演じてみたかったけれど、仕方ないな」と思っていたら、次の台本を読んだら「やっぱりある…」とすぐに緊張が戻りました(笑)。

――大河は今回初出演ということですが、現場の雰囲気はいかがですか?

“本読み”というリハーサルがあるのですが、いらっしゃる方も豪華な方々ばかりで圧倒されました。端っこで正座してお稽古させていただいていました。

――歌舞伎では女形をされていますが、今回は男らしい武士の役。演じてみていかがでしたか?

僕はどうしても自然と動きが柔らかくなるそうで、所作指導の先生にも、もっとキビキビと動くように言われます。でも、今度こそはと思ってものすごく胸を張って座ったら「そこまですると気になるから、ちょっとお腹に力を入れて前かがみくらいでいい」と言われてしまって。

声も高いので、リハーサルで男らしく低い声を出そうと意識していたら、若旦那から「ちょっとせりふが気持ち悪いな」と言われまして。太い声を出そうとすると声が小さくなるので、ひげ面の五助とのギャップが気になるらしいんです。なかなか思うようにいかず、緊張の絶えない数日を過ごしています。

――歌舞伎と映像作品は演じていてもまったく違うものと感じますか?

そうですね、同じお芝居でも違いがあります。歌舞伎ですと、僕たちは腰元や仲居のお役をさせていただくのですが、最初は盛り上げても、あとは主役のお芝居の邪魔にならないように、目も伏せがちに…と教わるんです。

いわば自分を殺すことを教わるので、映像作品では、自分を出すということが難しいですね。それこそ女形なんて、立役(男性の役)の後ろに下がるように教わるので、前に出ることがあまりないですから。ただ、今回はそのスタンスが五助役にぴったりだと思います。

――「真田丸」ご出演について周囲の反応はいかがでしたか?

若旦那の許可を得て、最初に両親に話したのですが、すごく喜んでくれました。ただ、やはり血筋なのでしょうね。母親も「なんか緊張してきたわ」と言い出して。「ごめん。僕もものすごく緊張してる」と二人で緊張し合っていました(笑)。

――大河を経験されて、今後、映像作品で挑戦してみたいことはありますか?

宝くじに当たったようなものだと思っているので、これ以上はないです(笑)。でも、目標を掲げるなら、もう一度NHKさんに出させていただけるようになることです。選んでいただけるような役者になりたいです。

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