――いよいよ公開ですね。
はい。撮影したのは2年半ぐらい前で、本来は新型コロナウイルスが日本に入ってきた頃に公開する予定でした。それが延びに延びて、“ようやく”という気持ちです。
――この作品に参加する経緯から教えてください。
俳優育成のためのワークショップをやっている“アクターズ・ヴィジョン”さんという所があって、私は10代の頃から通っていました。2019年の春頃、園子温監督が実際に映画を作るためにワークショップオーディションを行うというお知らせを頂いて、これは受けるしかないと思って申し込みました。
ワークショップを主催するアクターズ・ヴィジョンの松枝佳紀さんという方が、今作のプロデューサーもされているんですが、私はハーフで、なかなか役を選ぶ顔立ちをしているんですけど、「それでも(演技の稽古を)続けていった方がいいよ」といつも言ってくれていたので、いろんなご縁を感じています。
――台本を読んだ印象は?
51人全員が主人公というか、ちゃんと1人1人にフォーカスを当てている作品というだけあって、個性的なキャラクターがたくさん出てくるなぁって(笑)。台本が296ページもあって、かなり内容の濃い2時間半の映画になっています。
――モーガンさんが演じる方子は、どういう人物ですか?
山岡さんが演じる映画監督・小林正の元恋人で、オーディション参加者ではありません。詳しく説明するとネタバレにつながるので言えないんですけど(笑)、小林監督との関係性に注目してもらいたいなと。私自身、方子という役に対して共鳴できる部分があって、「あぁ、私もこういうふうに言うだろうな」って思うところも多かったので、スムーズに演じたり、セリフを言ったりすることができました。
――劇中で映画のオーディションの様子が描かれていますが、実際にもワークショップを通して出演者が決まったりして、現実と作品がつながっているような感じも。
はい、ありましたね。これから俳優として活躍したいという方がたくさん参加されていて、現実と撮影が入り混じってる感覚もありましたし、だからこそリアリティーがあったり、ドキュメンタリー感があったりするものになったのかなと思います。
――園監督の作品についてはどんな印象を持っていましたか?
最初は、勢いのある刺激的な作品が多い印象があったのですが、掘り下げていろんな作品を拝見すると、「気球クラブ、その後」のように優しい、淡い記憶みたいなものもすてきに撮られる監督なんだって思ったりしました。
園監督いわく「今回の作品が一番好き」
――今作は園監督の“原点回帰”とも言われてますが。
園さんが「今回の作品が一番好き」って言ってくれてたりして、数ある園さんの作品の中で、そのような作品に携われたことが何よりもうれしいです。
――方子はオーディションを受ける役ではありませんが、実際にモーガンさん自身がオーディションを受ける時、どんな気持ちで臨まれていますか?
オーディションはやっぱり緊張します。もちろん「受かりたい」と思って受けていますが、実力だけじゃなく、作品とかキャラクター像とかに当てはまるかどうかも重要になってくるので、もし落ちたとしてもガッカリし過ぎないというか、受け止めるようにしています。
それは、落ちたとしても受けたことは全く無駄ということではないと思うからです。受かったらうれしいし、ダメだったとしても何らか次につながる。次にまた新しい出会いがある。だから頑張ろうって。
――確かに、こうすれば絶対大丈夫という基準はないですからね。
そうなんです。そう思えるようになってからは少し気が楽になりました(笑)。
――撮影時を振り返ってもらいたいんですが、走ったりするシーンもあって、結構大変だったのでは?
撮影は10日間ぐらいで一気に撮ったので、ホント、駆け抜けたという感じだったんです。なので、細かいことは覚えてなくて(笑)。でも、走るシーンは最初から決まっていたわけじゃなくて、撮影中、急に「これ、やってみよう」という感じで言われて突如走ったのは覚えています。
思ってた以上に何回も走ったので、いい運動になりました(笑)。ずっと履いていた靴が、最後のシーンでついに壊れてしまって、“これ以上走れないよ”という時に撮影が終わったので良かったです。
――そういうふうに、撮影中に浮かんだアイデアも盛り込まれているんですね。
はい。作品の性質上、園さんの遊び心がたくさん盛り込まれているんです。劇中で園さんの「カット!」という声が入っているところがあるんですけど、見ていて気付く人もいるんじゃないかな?
あと、園さん自身、ひそかに1シーン出ているんです。他の作品では絶対にやらないことも、この作品ではやっているので、園さんの作品のファンの方も新鮮に感じるんじゃないでしょうか。園さん自身も、私たちキャストも楽しくやっていました。
――作る側、出る側が楽しんでいると、見る側にもそれは伝わりますよね。
そう思います。見た後にやる気があふれる人もいると思いますし、真面目に考え過ぎていた部分が吹っ飛ぶ人もいるでしょうし、心が動かされる作品だと思っています。