発売中の「月刊ザテレビジョン11月号」掲載の連載「草なぎ剛のお気楽大好き!Vol.297」では、人生初の“朝ドラ”挑戦中の草なぎが、自身にとっての大切な出会いを振り返る。撮影中、ふとよみがえる恩師の声、心に浮かぶ懐かしい景色とは。
趣里ちゃんといつもケラケラ笑ってます
連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK総合ほか)が10/2月からいよいよスタートします。大阪での撮影は、順調という言葉しか出ないくらい順調に進んでます。僕が演じる羽鳥善一は、趣里ちゃん演じる主人公の鈴子に歌や曲を提供していく役。昭和の戦争をはさんだ大変な時期に、鈴子がステージに立ってエンターテインメントの力でみんなを元気にしていくというのがテーマ。趣里ちゃんと共に悩みながら戦っていくところが見ている方にパワーを届けられるんじゃないかなと思ってます。
善一の役作りは、一応モデルの方がいらっしゃって、写真を見たりはしてるけど、基本的に「剛くんの好きなようにやっていい」と言われているので好きにやってます。そうじゃないと、僕のこと起用しないでしょ(笑)。趣里ちゃんとのシーンがたくさんあって、いつもケラケラ笑ってますよね。楽しんじゃって大丈夫かな?ってくらい。
趣里ちゃんとは、いつも撮り終えた後に僕が「最高のシーンだったね!」って言うので「毎回言ってるじゃないですかー」って笑ってます。いや本当に思ってるから言ってるんですよ。そんな彼女の笑顔が本当に輝いていて、歌も踊りも演技も素晴らしくて、鈴子をやるために生まれてきたんじゃないかなと、僕は思っています。
でっかいグランドピアノ、買うか!
作曲家役なのでピアノの前にいることは多いです。でも僕はほとんど弾けない。和音とかはギターをやってるからちょっとだけ。昔は役で弾いたこともあったんですよ。ドラマ「猟奇的な彼女」(’08年TBS系)の劇中で、パッヘルベルのカノンを弾くシーンがあって、当時はハマッて電子ピアノ買って猛練習した。その後ライブでも弾いて(香取)慎吾ちゃんとデュエットしたことも。懐かしいなぁ。
なので、いろいろ楽器ができたらそれだけ理解が深まるから、ギターのためにピアノもまたやってみるのもいいかもしれない。最近は全く曲を作ってないんですよね。“はっぴょう会”をやりたいんだけど、あと3曲新しいのをやらないとできないの。そういう約束なんです。だけど、そう思うとプレッシャーで何も出てこなくて。それが今の悩みポイント。でも曲の前にセリフをいっぱい覚えないといけないから。
ただ、自分にどこか期待して、降りてくるのを無意識に待っていようとは思ってて。ピアノに触れる機会が多いので、ピアノで曲を作るのもありかもね。よし、でっかいグランドピアノを買うか。3曲作るために(笑)。
つかさんは僕をステップアップさせてくれた存在
鈴子にとっての羽鳥のように、自分を一段上へ押し上げてくれた人…僕にとっては、つか(こうへい)さんですかね。いつも、つかさんの話になってしまうけど、つかさんとの出会いは大きかったです。つかさんが亡くなったのが僕の誕生日の次の日で、ことしで13年。思い出すよね。自分が誕生日を迎えると、明日つかさんの命日だなって、セットでやってくるわけで。切っても切れない人で。
僕はことし上半期、すごくたくさん芝居をやってたんですよ。ずっと台本をもってて、それこそドラマ「罠の戦争」(フジテレビ系)から映画、スペシャルドラマ、朝ドラ、まだ発表になってないものもあって、今もそれがつながっている。
その中で、時折つかさんをふと思い出すんですね。新しい作品に変わるとき、撮影をしてる最中も、今つかさんだったらどういうこと言うのかなと。いつも頭のこの上のあたりで、一つ一つシーンを撮ってるときですら、「今のお前、まずいんじゃないのか?」とか「ちゃんとアクセルふかしてるの?」みたいに聞こえてきそうで。
特に映画「碁盤斬り」(’24年公開予定)の撮影で7年ぶりくらいに訪れた京都の“太秦”といわれるところこそ、つかさんにお世話になった「蒲田行進曲」の舞台なので。当時つかさんがそこを練り歩いて執筆したって話もある。俳優会館を見つめて、あのセリフを書いたのかなと思ってね。思い付いたら、ふと立ち止まって僕はいつもここにいるなって思ってた。
だから、上半期はつかさんのことを思い出してた。あまり持ち上げ過ぎるのもとは思うけど、つかさんは僕を一歩ステップアップさせてくれた存在です。つかさんと出会ったのが20代の半ば。でも何にも僕は変わってなくて、考えていることといえば、「古着屋行きてぇなー」とかで(笑)。でも、あのときの自分よりたくさんの役と出会えた。それはやっぱりつかさんのおかげです。つかさんとの出会いこそが、僕は一番の財産だと思っています。