紀里谷監督「純粋に物事を見てくれる人たちに響いた」
紀里谷和明監督がメガホンを取った映画「ラスト ナイツ」のBlu-ray、DVDが5月3日(火・祝)に発売される。
同作品は紀里谷監督のハリウッド進出第1弾作品。イギリス出身のクライブ・オーウェンとオスカー俳優のモーガン・フリーマンが主演を務め、日本の伊原剛志、韓国のアン・ソンギ、さらにイラン人俳優のペイマン・モアディなど、各国の実力派俳優が脇を固めている。
Blu-ray、DVD発売を前に紀里谷監督がインタビューに応じた。
──武士道、騎士道に引かれた理由は?
これって、恋愛みたいなものですよね。自分のタイプがどうのこうのと語ってみても、実際にどんな子に引かれるかは分からないわけで、ただ好きになってしまった、という感じです。脚本を読んで、これだ、これを映画にしたいと思いました。
──忠義をテーマにした本作を撮り終え、振り返ってみて思われることは?
今回、監督作として3作目。1作目(「CASSHERN」)からは12年目です。やりたいことを全部やれたという感覚はあります。
これまでは、やりたいけどできないということもありましたが、「ラスト ナイツ」ではやりたいことをできました。本当に好きな脚本と出合えて、制限はあってもその中で十分な時間をとって、十分なお金をかけて撮ることができました。
──モーガン・フリーマンの存在感が素晴らしかったですね。
彼には圧倒的な説得力がある。お芝居がお芝居に見えない。映画って、うそだと分かって見に行くわけですが、それでも泣いてしまったりしますよね。それって、そうした人たちの説得力のおかげだと思うんです。その説得力が圧倒的でしたね、モーガン・フリーマンは。うそを信じさせる力がある。
──ハリウッド進出第1弾から大スターと組みました。
僕としては、一緒にやりたいから声を掛けただけです。スターだとかは関係なく。逆に声を掛けない理由が分からない。ビビっちゃうということでしょうか? でも、監督というのは自分のビジョンを出す仕事。ラーメンを食べたいのにそばを食べに行くという感覚は分からないですね。
──30カ国で公開されましたが、武士道的なスピリットが世界に受けた理由はどこにあるのでしょう?
描かれているのは基本的なことですからね。武士道というのも日本が言っているだけで、内容は自分を犠牲にしてでも守れるものがあるか、ということ。それはアメリカでも普通にある感覚です。
──スタッフ、キャストも多国籍な面々が集まりました。
逆に日本が日本人だけで作っているのが不思議です。僕は日本にいるから日本食しか食べません! みたいな考えは、もったいないと思います。いろいろな国のスタッフがいるからといって、実務的な苦労も何もないです。
外国に行ったら「どこから来たんですか?」なんて言われません。能力がある人が適した部署に就く。それだけです。そもそも国境なんて概念は、僕にはないですから。
──映画監督として、これだけの国際色豊かなスタッフ、キャストと仕事をされたのは初めてだと思います。手ごたえは?
普通ですよ。美術部や衣装部、映画以外のこれまでの仕事も日本人でなければなんて意識していませんでした。経済的な理由でできないということはありましたけどね。
──3作目にして普通になれたということでしょうか?
そうです。それも含めてやりたいことができたということです。本来、国境なんてないのがあるべき姿だと思います。僕は15歳から外国に行っているので、それが普通なんです。
──クライマックスの城壁に突入していくシーンのアクションや映像は圧巻でした。
あそこは仕掛けを考えなければいけませんでした。問題を自分で作って自分で解かなきゃいけないから大変ではありました。難しいことを選択しないとお客さんは喜んでくれません。
例えば綱渡りをしていても、下に安全ネットを敷いてやるより、高層ビルの間を歩いた方が見たいと思いますよね。だから、難しいことを選ばないといけないと思います。
──映画を見た人の評判も良かったですね。
男性に限らず、たぶん普段その人がどのように生きているかが影響する映画だと思います。まじめに生きている人たちから、すごく評判が高かったと感じます。斜めに物事を見てしまう人には響かないのかな、とリアクションを見ていて思いました。
──真っすぐに忠義を描いているからでしょうか?
それもあると思います。情報で物事を見る人たちと感覚で見る人たちがいて、情報で見る人たちは「これはアクション映画だから」「これは紀里谷だから」「これは誰が出ているから」といったことを考えるんですよね。良いも悪いも。アクションはこうあるべきだとか。
いわゆる映画通といわれている人たちの見方といいますか。そういう見方もあれば、純粋に物事を見てくれる人たちもいる。今回はそういう純真な人たちに多く響いた気がします。
──今回、字幕制作にもタッチされていますね。
お任せでもいいんですが、僕は日本語を理解できるので。これがフランス語やイタリア語だったらタッチしませんが、字幕を監修できて、きちんと言いたいことが伝えられたと思います。
あと(字幕を担当した)戸田奈津子さんと仕事をしたかったというのもあります。どういうふうに仕事をされるのか興味がありました。
──最後にDVDリリースに向けてメッセージをお願いします。
僕は劇場でもDVDでもどっちでもいいという考えなんです。もちろん、願わくば劇場で見ていただきたいと思いますが、「映画は劇場で見るものだ」というこだわりはないです。僕自身、以前見たもので「あの映画良かったな」と思った時、劇場、DVD、飛行機、どこで見たかを思い出せない。そういえば、飛行機で泣きながら見ていたなとか。
音も画質もいいのに越したことはないんだけど、でも見てくれるんだったらスマートフォンでもいいです。それでも伝わるようなものを作っていけばいいわけで、伝わるようにこちらが努力しないといけないと思います。その中で何するのという話ですから。伝わればいいんです。
5月3日(火・祝)発売
監督・製作=紀里谷和明
脚本=マイケル・コニーヴェス/ダヴ・サスマン
主演=クライブ・オーウェン、モーガン・フリーマン
出演=伊原剛志、アン・ソンギ
価格=BD・4800円、DVD・3900円(税別)
発売元・販売元=ハピネット
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