<西野亮廣>ゴミ人間〜『えんとつ町のプペル』誕生の背景と込めた想い〜「日本中から笑われた夢がある」【短期集中連載/最終回】

2020/11/17 07:00 配信

映画

映画『えんとつ町のプペル』(12月25日[金]公開予定)誕生の背景とそこに込めた想いを語る連載第13回

芸人、絵本作家ほか、ジャンルの垣根を飛び越えて活躍する西野亮廣。2016年に発表し50万部を超えるベストセラーとなっている絵本『えんとつ町のプペル』だが、実は映画化を前提として設計された一大プロジェクトだった。構想から約8年、今年12月の映画公開を目前に、制作の舞台裏と作品に込めた“想い”を語りつくします。第13回目は、いよいよ最終回。これまでお付き合いくださった皆さんに、映画製作の最終段階に入った西野亮廣より、心からのエールを送ります。

【画像を見る】映画『えんとつ町のプペル』より。煙の向こう側にある星を信じ、飛び立つルビッチとプペル

早いもので、この連載も今回が最終回です。これまでの記事をまとめて一冊の本にして、映画『えんとつ町のプペル』の公開1週間前(12月18日)に発売するそうな。隠したところで隠せないので正直に白状しますが、発売のタイミングからお察しのとおり、これは映画『えんとつ町のプペル』の宣伝です。

こうして僕ごときの文章を好んで読んでくださる方は残念ながら少数派でして(好きです。結婚してください)……すっかりお忘れかもしれませんが、映画『えんとつ町のプペル』は、「テレビドラマの映画化」でもなければ、「テレビアニメの映画化」でもなく、「絵本の映画化」で、まだまだ誰にも知られておりません。YouTubeでライブ配信をしていると、今でもよく言われるんです。

「プペル? 聞いたことないんだけど」

我々のような何の実績もない弱小映画に潤沢な宣伝費は用意されておりません。よって、「映画公開に合わせて『エッセイ集』を出して、本屋のお客さんに映画のことを知ってもらおう! エイヤー!」という実に涙ぐましい戦略を強いられています。公開1ヶ月前のこの時期にエッセイを書く時間などありやしないのですが、そうも言っていられないのが弱小映画の製作総指揮です。作品を作り、西へ東へ走り回り、方々で頭を下げ、朝方に眠い目をこすってエッセイの執筆(広報活動)。

最近は、朝7時からオンラインサロンメンバーさんとジョギングをしています。こうした対面イベントを無料で開催してしまうと「東京のサロンメンバーだけズルイ!」という声が上がるので、参加条件を設けています。

参加条件は「映画『えんとつ町のプペル』のムビチケ前売券を持っていること」。ムビチケ前売券が、そのままジョギングイベントの参加券になっているわけですね。朝まで仕事をして、朝からジョギングをして映画『えんとつ町のプペル』のチケットを売っているんです。この活動が実を結ぶかどうかは知りません。でも、何もしないよりはマシです。

それにしても、今日はさすがに眠いな。映画公開が近づく度に、目の下のクマも日に日に酷くなる。

未来を夢見るクリエイターさんが、もしも、この世界に華やかな何かを求めておられるのであれば、早々に諦めてください。僕が知る限り、ここは年中、泥にまみれています。

大切なのは、「それでも掴みたいものがあるか?」。僕には、あります。

詳しい時期は忘れてしまいましたが、ずっとずっと昔。「ディズニーを超えたい」と言ったら、日本中から笑われました。とても悔しかったことだけは記憶しています。笑われたことが悔しかったわけではありません。日本人が、世界を競争相手から外し、それよりもずっと下の世界で生きることで話を進めていたことが、悔しくてたまりませんでした。
 
なんだよ、それ。おい、そこの日本人。なんで笑っていられるんだよ。目標の上限が決まった国を次の世代に渡すのかよ。何が「教育」だ。何のための「教育」だ。どの口で、子供に語ってるんだ。一生懸命学んで、正しく努力したら、遠くに行けるんじゃないのかよ。それとも、「どれだけやっても遠くには行けない」と言うのか。 

おい、そこの表現者。お前、なんで笑っていられるんだよ。お前のことを信じてくれているファンにお前は、ディズニー以下のエンターテイメントを胸張って届けるのかよ。

お前は、お前のファンに「ディズニーよりはツマラナイものに、貴方の時間とお金を割いてください」とお願いするのか? 違うだろ。言うなら、「今は、まだ」だろ? 「いつか一番になる」と言えよ。お前がそんなところで折り合いをつけたら、お前を信じてくれているファンがバカみたいじゃないか。笑うなよ。上限なんか決めるなよ。頼むから。
 

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