北村有起哉、“座長”綾野剛は「絶対にブレないというか…集中力が本当にすごい」<『ヤクザと家族』連載(3)>

2021/01/26 08:00 配信

映画 インタビュー 連載

映画「ヤクザと家族 The Family」連載第3回は、北村有起哉のインタビュー撮影:永田正雄

――中村というヤクザをどんな人物だと捉えながら演じていましたか?

今回の作品は綾野くんと舘さんが軸ということで、どういう人物が周りにいるのかなと考えた時に、(演じる)中村という人は向いていなかったんじゃないのかなって思ったんです。

――ヤクザ稼業にということですか?

そうですね。でも、努力家で誠実な部分があって人一倍忠誠心もあったからこそ親分である柴咲(舘)に認められて若頭になった。そうやって上に行けば行くほど、そのプレッシャーを重く感じてしまうタイプだったような気がします。

ヤクザの世界に限らず、そういう人っているんじゃないですかね。他に任せられる人がいない、自分がやるしかないという状況下で何とかしなきゃって思う。中村はすごく真面目な人なんだと思います。

――山本(綾野)と柴咲の関係をうらやましく思って嫉妬する中村はとても人間臭い男だなと感じました。

妬んでましたよね(笑)。山本は気骨がある男だし(ヤクザ稼業に)向いていたんでしょうね。たぶん中村はそれを一瞬で見抜いていたんだけど、何かいろいろ思うところがあって山本と仲良くできない。そういうところも、ちょっと器が小さい男ですよね(笑)。

――中村を演じる上で心掛けていたことはありますか?

ドスの利いた低い声で怒鳴るような演技はやる必要がないのかなと。ヤクザ映画とはこういうものだっていうイメージが何となくあるじゃないですか。僕も好きだったし。

でも、中村に関してはヤクザっぽい演技をしなくてもいいような気がしました。バイオレンスムービーを期待している人はちょっと拍子抜けするかもしれませんが、今回の作品はヤクザ映画というよりは過去と現代、それぞれのヤクザの世界を描いたヒューマンドラマなんじゃないかなと思っています。

――藤井監督の演出で印象に残っていることは?

前回ご一緒した「新聞記者」の時もそうでしたけど、細かく指示されることはなかったです。中村はある程度までしか出世しない不器用な男だということを最初に言われたぐらいですかね。

藤井監督が綾野くんや舘さんに演出しているところを見ていたんですけど、寄り添うように優しく言葉を選んでいるなという印象でした。役者の演技を否定せず、それを受け入れながら自分の考えを伝えていく。

外国人の舞台演出家が「いやぁ~、素晴らしい!」と言った後に「でも、ここをこうするともっと良くなるよ」っていいながら演出するやり方があるじゃないですか。まさにあんな感じ。演じている側も悪い気がしませんから。

藤井監督の演出を受けた綾野くんのエンジンがどんどん掛かっていく様子をそばで見ていたので、さすがだなと思いました。

――綾野さんと共演した感想は?

いい意味で圧がありますね(笑)。絶対にブレないというか…集中力が本当にすごい。以前大河ドラマ「八重の桜」(2013年、NHK総合ほか)で共演したんですけど、それ以来の再会。綾野くんが、山本の兄貴分である中村を演じるのが僕でうれしかったと言ってくれて。僕も久しぶりに綾野くんと芝居ができてうれしかったですね。

大河で共演したのは7、8年ぐらい前になるのかな。あれから、綾野くんもいろいろキャリアを積んできたので今回の現場ではたくましさを感じていました。

――舘さんが演じた親分・柴咲はすごく懐が深い組長でしたね。

本当に優しい組長でしたよね。昔のヤクザ映画を好きな人が見たらいわゆる“親分”という感じではないのでびっくりするかもしれませんけど、こういう心が温かい親分も本当にいたんだろうなって思いましたし、そういう親分像はとても新鮮でした。