市原隼人「『これが映画です』と言える作品です」<『ヤクザと家族』連載(4)>

2021/01/27 08:00 配信

映画 インタビュー 連載

市原隼人撮影:永田正雄

――今回の作品で他に何か印象に残っていることは?

撮影の今村圭佑という人間が大好きなんです。映画「リリイ・シュシュのすべて」(2001年)で出会った篠田(昇)さん(カメラマン)以来です、こんなに惚れたカメラマンは。

また、一緒に映画を作ることができてうれしかったです。

――他のカメラマンとの違いはどんなところですか?

光の使い方や色使いが個人的に好きで、感情を映像に残す事に長けてる。決して前に出過ぎず、撮影監督として各技術スタッフを引っ張っていきながら全ての部署を立たせて一つ一つ丁寧に仕事をする姿に安心感がありました。

――市原さんにとって“The Family=家族”とはどんな存在ですか?

自分の全てを懸けても守りたいと思うものです。

――2021年も2020年に続いて、しばらくの間は“ステイホーム”が求められますが、家にいる時はどんなことをしているんですか?

去年は3カ月ぐらいだったかな…そんなに長く休みをもらったのは初めてでした。基本的には毎日料理をして家の中を掃除していました。

次の日のことを考えて準備しなくていいんだっていう感覚がすごく不思議で。何かに没頭したいなと思った中の一つが料理でした。毎食、ペペロンチーノを作っていたこともありましたね。

――どのくらい作ったんですか?

何日続けたかそれすら分からないぐらいです(笑)。にんにくを包丁で刻んでみたり、手で崩してみたり、ブレンダーでおろしてみたり。フライパンでにんにくを炒める時の温度は何℃が一番いいのか。どういう作り方をすればおいしくなるのか。いろいろ試していました。

――究極のペペロンチーノは出来上がったんですか?

結局、何が一番いいのか分からなくなっちゃいました(笑)。でも、すごく楽しかったです。ペペロンチーノ以外のパスタや中華、和食も作りました。

――家にいる時間が多い中で、今後どんなことをやりたいと考えていましたか?

役者って何なんだろう。この先、どうなっていくんだろうって自分なりに考えていました。やっぱり、いろいろな方にお世話になりながら力を借りて芝居をさせていただいている。

それを強く感じたと同時に、この大変な状況の中でたくさんの人たちに楽しんでいただくために何をすればいいのか、自分に何ができるのか。

映像関係の色々な企画を立ち上げると同時に、実現するかどうかは分からないですけど、いつか一人芝居をやりたいという夢ができました。

――すてきなお話の後に大変恐縮ですが、少々ユルい質問を。2021年の干支は「丑」ということで…、最近「ウッシッシ」と思わず笑ってしまうぐらいうれしかったことは?

今日(取材日)の朝なんですけど、掃除機をかけていたら娘が「いつか死ぬのかなぁ。そうしたらみんなに会えなくなっちゃうのかなぁ」って聞いてきたんです。

――何の前フリもなく急に?

急にです。でもその娘の言葉を聞いた時に、何だか生きていることがうれしくなりました。当たり前のことを幸せだと思える。その当たり前の幸せがなくならないことを願いながら普通に生きていけたらいいなと思いました。


◆取材・文=月山武桜
◆スタイリスト:小野和美(Post Foundation)/ヘアメーク:大森裕行(VANITES)