――オファーを受けた際の感想をお聞かせください。
かなり骨太な作品だなと、その中でどっぷり生きられる役が来たなと思いました。台本を読んでみると、体が疼き、自分の細胞が目を覚ましていくような感覚でした。
人間の本質に目を向けるようなハードな内容に驚きましたし、ポップな作品が多い今の時代に、ここまで真逆なものを作れることがすごいなと感じました。生半可な気持ちじゃできないなと思います。こういう作品をやってみたかったですし、ずっと求めていたような作品です。
――本作が連続ドラマ初主演となることについてはいかがですか。
もちろん、連続ドラマ初主演というのは、普通に考えたら嬉しくて喜ぶべきことですよね。ただ、今は主演ということ以上に、作品の大きさを感じています。この「向こうの果て」という作品の主人公・池松律子を演じられることが私にとってすごく意味を持つだろうなと思っています。
――本作で演じる池松律子の印象を教えてください。
彼女のことを理解するのは前途多難だなと思っています。接する相手によって見せる顔が全然違うんですが、多重人格ではないし、意識的に演じ分けているわけでもない。彼女の奥にある核心に触れないと、チープな表現になってしまうなと思っています。台本を読めば読むほど深みにはまっていく感覚です。
それでも、彼女を演じたいという気持ちがメラメラと沸いてくるんです。タイトルは『向こうの果て』ですが、律子が見ている景色は絶望でしかないんです。だからこそ、その先を見ていないと生きられない、ものすごく死を近くに感じている女性だと思います。
今回、「死んでるように生きてる」というセリフがあるのですが、私自身、数年前まで死んでいたように生きていた時期があって。今は、ありがたい環境に身を置けているなと思いますが、当時はお仕事もなくて自分は生産性や存在価値がないと思い込んでしまったことがものすごくきつかったんです。
生きる楽しさみたいなものを見失っていたんですよね。そのせいか、生に対しての執着や、求めるものの理想はすごくあるんです。そういう意味では、彼女のことがわかる気がしています。
――本作では三味線も演奏されるそうですが、稽古はいかがですか。
難しくてまだまだですが、三味線の稽古はすごく楽しいです。三味線を演奏する方って、みんな身体を壊して辞めてしまうらしくて。自分の身体を滅ぼしながら、命懸けで表現しているのがすごいなと思いました。
極めれば極めるほど、身体に負担がかかってしまうそうなんです。三味線を弾くと、すごく集中できるんですよね。楽しくて夢中で時が経つのを忘れるくらいずっと弾いていたいです。
――舞台版では、同じ律子役を小泉今日子さんが演じられるとのことですが。
小泉さんと同じ役を演じられるというのは、恐れ多いですし、身の引き締まる思いです。この作品が決まったときに、嬉しいメールをいただいたのですが、今日までそのメールが本当に作品に向き合う力になりました。
こんなに人に感動や力を与えてくださる方なんだと改めて感じています。もちろん、舞台も観に行きます。生の舞台で小泉さんが演じる律子がすごく楽しみですし、早く観たいです。
――最後に、視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
令和の時代に、こんなにも人間の本質をえぐりだす作品はなかなか観られないと思います。今では希薄になってしまった人と人との結びつきや、人間ドラマは、本当の意味で琴線に触れる作品になると思います。
私自身、まだ演じる律子がどんな女かわかり得ない部分ばかりで挑戦でもありますが、彼女は接する相手それぞれからは全然違う顔を持つ女に見えています。どんな女に見えるのか、本当の律子はどんな女なのか。ラストも衝撃的なので、ぜひ最後までご覧ください。
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