――このドラマの企画者は渡辺さんということですが、なぜ今漫画「ここは今から倫理です。」をNHKのドラマで実写化しようと思ったのですか?
渡辺:脚本の高羽(彩)さんとは、10年来の付き合いで、年に一度くらいの頻度で定期的に会って、どんなドラマを企画しようかなどといった話をしていました。僕はもともと高羽さんが手掛ける舞台のファンだったんですよ。
僕は大学受験のときに倫理を選択していたこともあって、この漫画のタイトルに惹かれてもともと読んでいました。高羽さんもまた漫画がお好きで、3年前にこの漫画が面白いと、ちょうどTwitterで呟いていたので、彼女の資質を理解した気になっている僕は直感的に、この原作とこの作家のカップリングは合うのではないかと思ったんです。もちろん、原作者の雨瀬さんと高羽さんが考えていることが全く同じという訳ではないのですが、お二人の持っている問題意識みたいなものがすごく近いような気がして。
高羽さんはこの作品のタイトルにもある、“今”をすごく意識されているんですよ。一度ボツになった企画を数年後に「もう一度これ、出し直してみましょうか?」といったのですが、「いや、あの企画は去年のあの時期だったから書きました」とおっしゃるんです。そんな高羽さんを見て、常に“今”と寄り添おうとしてるんだなと感じます。だからこそ、“今”というタイトルが入っているこの漫画に高羽さんが惹かれたことが面白いなと思い、3年前にNHKのドラマ部に一度企画を出しました。
結果は通らなかったのですが、手ごたえはあったので、高羽さんに1話3行くらいの簡単なプロットを8話分作っていただいて、僕が書いた所信表明と一緒に、出版元の集英社さんとNHKのドラマ部両方に改めて提出したんです。そしたら、2年前くらいにやっとOKサインが出て、作れることになりました。
――尾崎さんは、この漫画を実写ドラマ化すると聞いたとき、どう思いましたか?
尾崎:すごく面白いなと思いました。一見、パッケージとしては、学園ものという王道のフレームに、これまでにあまりなかった倫理の先生が主役という要素が合わさることで、ドラマ化しやすそうな題材だなと思ったのですが、実は本質的には難しいところがたくさんあって。“倫理”という言葉は、オールマイティーというか…すごくいろいろな意味を持ってしまっているので、この言葉をテーマにドラマを作るとなると、考えなければならないことが非常に多いんですよ。
ドラマの中で、こういうことは倫理としてどうなんだろう? という問いをきちんと描かなければならない、加えてそれをどういう風に表現するかということも不可分なことだなと。ドラマを作っていく中で、自分自身の価値観も常に問い直されてしまい、一度、物事をすべてゼロから考え直していかなければならないと痛感しました。
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