――原作では、生々しく過激な描写も少なくない印象です。それをNHKのドラマにて実写で表現するというのは、苦労した部分もあったのではないでしょうか?
渡辺:そうですね。あくまで、物語として楽しめることは意識しました。高羽さんが、問題意識や描くべきテーマをしっかりと捉え、30分という制限がある中で、流れに合わせた起承転結、ドラマチックな振れ幅をエンターテインメントとしてしっかりと描いてくださっていると感じています。
性表現やリストカットの描写などは、NHKのドキュメンタリーの部署とも話したりして、実際に被害にあわれた方の感覚や実状について学びました。その上で伝えるべきところはしっかりと伝えるが、なにもかもつまびらかに出すのが正しいのかというとそうではないはずなので、そこは気を付けました。フィクションだからこそ、受け取りやすさも重視して描いています。
――原作のエピソードをどういう基準で取捨選択しているのでしょうか?
尾崎:高羽さんが全体の構成として、シリーズとして一話完結に見えるけど、高柳の物語としては起伏があるのがいいのではないかといったイメージをお持ちだったので、そういった観点からエピソードを取捨選択しています。
渡辺:まず企画の段階で、すでに高羽さんが主導でエピソードを選出していました。ただ、第1話は内容を盛りだくさんにして、視聴者に少し強めの印象を与えたかったので、(逢沢)いち子(茅島みずき)と(谷口)恭一(池田優斗)の話をミックスしようと、こちらから高羽さんに提案させていただいたんですよね。
第2話では、高柳先生が発する哲学の言葉が生徒に響く様を見せて、第3話では、同僚の先生から見た高柳像を通して高柳先生という人物を浮かび上がらせるのと同時に、人の心の難しさを示すために苦い終わり方にしています。高柳という人物の見せ方を意識して、この順番にしました。原作でも、高柳先生の家やプライベートなどはほとんど出てこないので、結構ミステリアスなキャラクターなんですよね。全8話しかない中で、彼はどういう人物なのかを小出しにしつつ、視聴者には“わからない”ながらも興味を持ってもらえるような、そんなエピソード順にしています。
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