よるドラ「ここは今から倫理です。」制作陣が語る、人気漫画を実写ドラマ化する意義

2021/03/13 07:40 配信

ドラマ インタビュー

「倫理でも解決しきれないことがある、ということを表現」


「ここは今から倫理です。」より(C)NHK

――原作漫画、実写ドラマ関係なく「ここは今から倫理です。」の中で、お二人がそれぞれ最も印象深いシーンやセリフを教えてください。

渡辺:僕は映画も「雨に唄えば」も好きなので、原作ドラマ共に「映画に縛られる2時間は、自由はないが不安もない」というセリフが最も胸に響いています。すごくグッときました。

あと、ドラマでは第3話冒頭の職員室のシーンで、川島潤哉さんと三上市朗さん演じる男性教師たちが「高柳先生は顔が良いから女子生徒には人気。でも、だからこそ悪質ないたずら(セクハラ冤罪)を受けることも…」「モテる男は辛いねぇ~」などと談笑していると、養護教諭の藤川先生(梅舟惟永)が「こういう問題をモテるモテないの話に矮小化するのは危険ですよ」とぴしゃっと注意するシーン。男性教師たちは一応「や、や、すみません」とは謝るけど、全く反省してないあの感じが、何気ない日常の一コマで、心がざわざわするなと。

尾崎:僕は原作だと、都幾川(幸人)くんの「ギュッとして」です。都幾川くんと高柳先生それぞれの違った苦悩を痛いほど感じられて、この漫画らしさが詰まったシーンのような気がして印象的でした。ドラマだと、第3話のラストシーンで、ミスコンの結果(時代の妹がミス羽高に選ばれる)が教室内まで聞こえてくるところです。シンプルなドラマではないということを象徴している場面であると同時に、この世界には高柳先生、ひいては倫理でも解決しきれないことがあるということを表現しているなと。

――昨今、日本の映像業界では、映画ドラマに関わらず人気漫画の実写化がメインになっているように感じます。漫画を実写化すること自体に批判的な意見も少なくないですが、お二人自身はこのことについてどう思いますか?

尾崎:大変さはすごく感じます。原作ファンの皆さんが、各々の中でその作品に対するイメージやキャラクター像があって、それを大切にされているので、どうしても多少なりともズレが生じてしまう。そういった原作ファンの方々が私たちが手掛ける実写ドラマを見られてどう思うのか、率直に気になりますし、実際にいろいろなご感想があるのだなとも思います。

ただ、実写化する際に外見もとても重要だと思うのですが、それ以上に原作が描こうとしているテーマや芯を間違えないようにすることが、最も大事かつ難しいことなのではないかと。原作の魂みたいなものをはき違えずに、しっかりと捉えながら作っていくことを常に心がけています。