朝ドラは半年間の放送のなかで、ヒロインが結婚して子どもができて、その子どもたちが成長していくという流れが描かれることが少なくない。
前半は、ヒロインは父母や祖父母の愛に育まれながら成長していく様子を描き、後半になると、ヒロインが結婚し、母になり、その子どもたちの成長を見守る物語になっていく。
「おちょやん」では千代と一平に子どもがおらず、親のない子の面倒を見ることになった。このパターンが朝ドラには時々ある。まだ記憶に新しい前作「エール」(2020年度前期)ではヒロイン・音(二階堂ふみ)の姉・吟(松井玲奈)は、夫・智彦(奥野瑛太)が戦後、闇市で出会って年齢を超えた友情を結んだケン(松大航也)を養子に迎える。
智彦とケン、吟とケンのどこか友達のような関係は爽やかだった。このケースが「おちょやん」の千代と一平と寛治の関係と最も近いであろう。
戦争で孤児になった子どもを描くことが朝ドラではよくあって、「なつぞら」(2019年度前期)では主人公・なつ(広瀬すず)が戦災孤児だった。
東京大空襲で母と生き別れ、兄妹三人で生き延びようとしたが、離散。なつは北海道の柴田家に引き取られる。ただ、苗字だけは本当の親の奥原を名乗っていた。
なつは育ての親に恵まれたが、妹・千遥(清原果耶)は親戚に預けられ冷遇されて家出する。置屋を営む家の子になったことでなんとか落ち着いた生活ができるようになるが、なつと再会したときの千遥には、どこか憂いがある。
また、兄・咲太郎(岡田将生)はひとりでなんとか生きていたが、劇場でダンサーをやっていた亜矢美(山口智子)に引き取られ、母子のような姉弟のような、判然としない関係のまま肩寄せ合って暮らすことになる。
戦争で離れ離れになった三兄妹が、各々別の家族に育まれて生きてきて再会するという構造は、ドラマティックかつ戦争の残した問題の提起にもなっていた。
現在再放送中の「花子とアン」(2014年度前期)ではヒロイン・花子(吉高由里子)の妹・かよ(黒木華)は関東大震災で恋人を失ったのち、戦争を経て身寄りのない子を引き取る決意をする。未婚のかよが子どもを育てることは「なつぞら」の亜矢美のケースと近い。亜矢美もかよも亡くなった恋人に操を立てつつ、若い命を育てようとしている。そこには希望がある。
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