佐藤千亜妃「レンアイ漫画家」主題歌「カタワレ」配信中!「音楽が楽しくて、より音楽と密になってきてるなって感じています」

2021/04/08 08:00 配信

音楽

美しく切ないバラード「声」も配信中撮影=諸井純二

「カタワレ」はテレビドラマ「レンアイ漫画家」(フジテレビ系)への書き下ろし主題歌。ドラマは鈴木亮平演じる恋愛下手の少女漫画家を中心としたクセの強いラブコメディーだが。

「根が明るい性格じゃないので、ラブコメへの書き下ろしということで筋力を試されました(笑)。でもプロデューサーさんと監督さんと曲についてディスカッションしていく中で、これまで一人で生きてきたけど、誰かと出会ったことによって生きやすくなるみたいなことをテーマとしたいという話になって、自分が描いてきた音楽の世界とリンクしたんですね。それってきのこ帝国の『東京』とかでも描いてきたことで。それで、生きてくことの重さや、誰かと出会うかけがえのなさを詞にできたかなと思ってます。ただポップなだけでなく、心に残るような歌詞になるようすごくこだわって書きました」

恋愛をきっかけに、自身の生き方にまで気持ちが及ぶような曲になっている。

「誰かと出会って生きていくということをこんなにポップな曲で描くっていうのは、このドラマがなかったらトライしなかったと思いますね。自分がもしドラマに曲を書かせてもらうときが来たら切ない系だと思ってたので。でも負けず嫌いなので、頑張ってみようと思って。久々にデモでギターソロを弾いたり、すごく楽しみながらできました。誰かと誰かが出会うことを思い浮かべたときに、でこぼこ同士が合わさってパズルのピースがハマるようなイメージがあったんです。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』という映画が思い浮かんで。最初は1個の人間だったけど雷か何かで二つに分かれてしまって、その自分の半身を探してるっていう物語なんですけど。半身は女かもしれないし、男かもしれない。今はそういうところが以前よりフリーになってきて。だからいろんな人が感情移入できたら嬉しいなと思います。まだ好きな人に出会えてない人でも、どこかに自分の半身がいるはずだと思って希望を持って聴いてもらえたらいいなって」
 
2018年からスタートさせたソロ活動は音楽性に枠がなく、とても自由に思えるが、曲制作におけるバンド時代との違いとは何だろうか。

「作るときのモチベーションや初期衝動みたいなものは全然変わってないんですけど、研究熱心になりました。ソロになったからなのか歳を重ねたからなのかわからないんですけど。いろんなアーティストさんの曲に刺激を受けるっていうことが昔は偶発的に起きてたんですけど、今は自らいろんな情報を体の中に入れるようにしています。自分の表現に落とし込むとしたらどういうやり方があるんだろうってすごく考えます。最初のアルバム『PLANET』を作ったことで、逆に自分だけにあるものってなんだろうっていう風に考えるようになりました。それをするとより音楽が楽しくて、より音楽と密になってきてるなって感じています」

 最近の心境の変化について、こう続ける。

「高校や大学のときは、すごく視野が狭くていろんなことを決めつけがちだったんですけど、否定しても結局堂々巡りだったりして。じゃあ一回受け入れてみたらいいじゃんと思ったんですね。そうしたら面白いと感じるかもしれないし、否定から入ることの無意味さを感じるようになって。人の伝聞だけで何かを評価するって自分にとって損なことだし。ただ、そうしていろんな音楽を吸収していったら、脳がダメって言わなくなり過ぎちゃって、それもどうなのかなって思ってきて(笑)。だから、今は自分のヘイトだったりこれはないというジャッジメントも大事にしなきゃなって思い始めています。
これはセカンドアルバムの構想につながる話なんですけど、そうじゃないと自分のシルエットが分からなくなるなって。若い頃にNOって言ってたことで損してた部分もあったんだけど、それはそれで守られてた何かがあって。そのバランスが難しいんですけど。今はまたちょっと自分の中の好きと嫌いをちゃんと聞いてあげたほうがいいなって思いながらアルバムを作ってますね」

取材・文=小松香里