――最年長の配達スタッフ、“タツさん”こと田代龍平を演じられましたが、役柄に込めた思いを教えてください。
タツさんは、困っている相手を放っておけなくなっちゃう人。昔はタツさんみたいな人、いっぱいいたんですよね。僕が子どものころは隣の住人のことはもちろん、近所の人のことはみんな知っていたり、そんなつながりがあったんです。
でも今の時代らしく、脚本もとてもリアルで“そういう人情ごっこはやめてください”みたいなことをタツさんが言われる場面もあって、バランスが取れていると思います。決して全員に賛同してもらえるわけではないと思いますが、どこかで“こういう人、いいな”と思ってもらえたらという気持ちで演じました。
今は“密”になったらいけない時代ですが、心のつながりがとても密なドラマです!
怒られてばっかりだった新人時代、帰り際にふっとやって来てフォローしてくれる大道具さんがいたのですが、その方のことを思い出して演じてみました。
――撮影に入って現場で感じたことは?
僕、これまではわりと“説明する役”が多かったのですが、タツさんは“対話する役”。だから、相手の方の表情や演技の刺激で、予想と違うお芝居が生まれたんです。相手の顔を見ていたら、自然と判で押したような言い方ではなくて、妙な“間”が入ったりして、“あっ、これいいな”と思って…。
今回の現場では、そういうことが何回もあったんです。ドラマって時々そういうことがあって10のプランを用意しておいてもそれとはまた違うことができちゃう瞬間がとてもうれしいんですね。
鈴鹿央士くんは21歳で、僕とは実に44歳も年の差があるのですが、すごく自然に不器用な若者を演じてくれたので、彼とのシーンもとても好きでした。
――“座長”を務められていかがでしたか?
今回の現場は全員、僕より年下で、タツさんも店で最年長の配達員という役柄でした。でもよく関根勤さんとも話すんですけど、僕、中身が25 、26歳で止まっているんですよ(笑)。芸能界に入ったとき、まわりがみんな年上だったころの感覚が今も根底に残っているんです。
なので、“座長”を意識するというよりは、現場で田村正和さんや平泉成さんの物まねでせりふを言ってみたりして、みんな、それで多少和んでくれたかな、とか…。そんなことはちょこちょこしていました。
実は僕、21、22歳ぐらいでドラマに初めて出演したとき、十数回連続でNGを出したんです。照明さんに「コイツなんなんだ!」とか嫌味を言われて余計アワアワしちゃって、ディレクターにも怒られて…。最後、棒読みになってOKもらったけど、放送を見たらカットになっていたんです。
今の若い方たちって緊張はしていると思うのですが、僕みたいにアワアワする人は一人もいないし、非常に軽々とおやりになる。だから、昔よりもすごいプレッシャーでしたね。
――若いキャストの皆さんとはどんな会話をされましたか?
鈴鹿くんも、あかね役の阿部純子さんも映画がお好きだったので、最近見た映画の話をよくしていました。撮休の前日に映画の話をしたら、次の撮影のときに「見てきました~!」って言ってくれたりして…。非常に反応が速い共演者の皆さんで、とても楽しかったです(笑)。
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