監督賞は「俺の家の話」 『これで終わっちゃうなんてことは絶対にないだろうと…』(金子文紀D)

2021/05/20 19:00 配信

ドラマ インタビュー

「俺の家の話」を手掛けた金子文紀監督、山室大輔監督、福田亮介監督撮影=石塚雅人

第4話、親子の舞は「長瀬さんの気遣いがあってこそ」(山室D)

――プロレスラーの長州力さんたちが本人役で出演されました。演技指導は大変だったのでは?

金子:長州さんはあれだけのスターなのに、謙虚で真面目。常に僕たち演出陣をリスペクトしてくれました。ただ、セリフは間違える(笑)。それが全部面白いんです。

最初の頃は「寿(ことぶき)」と言うところを「じゅ」「じゅ」と言っているので「何の事かな?」と。最終話では「阿佐ヶ谷、次は荻窪」と言うところを、「次は新大久保」と言っていました。みんな笑ってしまうんですが、長州さんはいっさい怒らない。それでいて、仕上がりは最高の演技で、本当にすてきな方でした。

長瀬くんもそういうときは、何もなかったかのようにさりげなく「もう一回、いきましょ!」と言う。そういう空気の作り方がうまかったですね。


――長瀬さんを「改めてすごいな」と思ったのは、どんなところですか?

金子:長瀬くんは、元々集中力があるんですが、今回は特にすごかった。演技と演出について「こうしたいんだけど、どうかな」というキャッチボールがハイレベルにたくさんでき、楽しかったですね(まるで長瀬くんも演出家のようでした)。

山室:初めて組んだ僕にも、すごく気を使ってくれました。それがいつの間にか“山ちゃん”と呼ばれるように(笑)。距離のとり方がとてもうまいなと。演技では、笑いの場面と感情的な場面のバランスが巧みで、ディレクションする必要がないほどでした。自分で緻密に考えた演技プランを持っているけれど、何かリクエストするとすぐ理解して対応してくれました。

福田:僕も長瀬さんとは初めてで、すごく真面目で紳士だなと思いました。僕は第5話から入ったので、演出についてもいろいろ相談すると、アイデアを出して助けてくれました。本当にすばらしい座長だなぁと思いましたね。

山室:第4話で、長瀬さんと息子役の羽村仁成くんが「小袖曽我」という演目を舞う場面。本番まで2回しか稽古できず、長瀬さんも自分の舞で精一杯のはずでしたが、羽村くんによく声を掛け、「俺はここでこうするから、こうしてね」と助けていました。あれだけシンクロする舞ができたのは、長瀬さんの気遣いがあってこそだと思います。とにかく周りをよく見ている。

福田:“潤 沢”のステージでもそうでした。ただ、寿一が「恋はFlower」と歌うところを「恋はブリザード」と歌ってしまうのは、長瀬さんは始めからそう変えていて。僕もいいなと思ったので、そのまま(笑)。長瀬さんの歌唱シーンを撮れたことはとても光栄でした。

金子:現場での長瀬くんは、本当に完璧だったね。若い俳優さんが分かりやすいように、「(アクションを始める)きっかけはこれで大丈夫だよね」と僕たちにあえて確認するとか、なんとなく自主トレを始めるとか。“やっているよ感”を出さずにさりげなく周りを助けていました。