「酒癖50」で、酒野が更生を促してきた社員たちの飲み方は、相当、ひどいものだった。部下に一気飲みを強要する青田(浅香航大)は“アルハラ”を繰り返していたし(第1話)、お酒を飲むと態度がひょう変する営業部・下野(前野朋哉)は酒乱そのもの(第2話)。お酒を口にしたときだけ“無礼講”をさく裂させる部下・口山(犬飼貴丈)や(第3話)、美人社員に強い酒をすすめて女性を口説く色川(村上純・しずる)ら(第4話)は、酒によって自分が大きくなっていることに気付いていない愚か者たちだった。
彼らに待ち受けているラストはどれも、息を飲むほど衝撃的で強烈なシーンになっている。酒におぼれて人生を棒に振った者たちの悲惨な姿には、ハッとさせられるに違いない。「あのときやめておけば良かったのに…」といった失敗のきっかけや、人間の弱い部分も逃げずにしっかりと描くドラマだからこそゾッとするほどの衝撃が得られるのだろう。
ABEMAの配信ドラマは、“衝撃作”を量産している。例えば、歌姫・浜崎あゆみ誕生秘話をドラマ化した「M 愛すべき人がいて」では、激動の音楽業界を駆け抜けるアユ(安斉かれん)とマサ(三浦翔平)の愛と葛藤を描いたが、脚本の鈴木おさむが紡ぎ出したのは激しいドロ沼の世界。嫉妬に狂うマサの秘書・礼香(田中みな実)は、終始、粘っこくアユとマサの周りをうろついており、芸能の世界でライバルたちからいじめられるアユが涙をこらえるシーンなどは、昭和のスポ根ドラマのようであった。
同じく鈴木おさむ脚本の「奪い愛、冬」(2017年、テレビ朝日系)の続編である「奪い愛、夏」は、水野美紀、小池徹平、松本まりかといった“豪華怪優陣”がそろい踏みで、危険な愛の駆け引きに狂っていく様子が話題となった。目を見開く水野美紀が「ここにいるよー!」と迫ってくる姿を思い出す人もいるのではないか。
「そこまでやる!?」「その顔スゴいわ…」といった声が寄せられる程、とにかく“癖が強い”作品は、見ている方の心も忙しい。キャラクターも、物語の面でも予想もつかない展開をツッコみながら見たり、登場人物たちの悲惨な姿にあ然とすることもあるが、ドキドキやワクワク、恐怖や不快感なども含め、ドラマを見たことで得られる最上級の体験が待っている。映画でも地上波ドラマでも味わえない、ちょうどいい“癖強”ぶりは一見の価値あり、である。
文=中田蜜柑
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