――エンディングで披露されている、コンテンポラリーダンスも見事でした。
「ムチャブリです! 源(孝志)監督から太鼓と笛で『コンテンポラリーふうのやつを何か踊って』と言われたんです。振り付けは自分でしたので、敬愛する森山未來さまの映像を見まくりました(笑)。そこにお能からヒントを得た動きや、仲蔵の『三番叟』、『鏡獅子』の振りを入れたりしました。メークは太秦の方々と相談し、衣装はギリギリに決まって、下に履いているズボンは自前(笑)。ほぼ一発勝負ですごいプレッシャーの中で撮りました」
――今回、仲蔵を演じるにあたって、勘九郎さんが大事にしたいと思ったところは?
「とにかく芝居が好きだというところです。本を読むと、楽屋引き回しのシーンはとてもテレビではできないようなことをされているんです。だからこそ一度は諦めもしますが、それでも役者に戻ってくる。ドMか、よっぽど好きかじゃないとそれはないと思います。自分を養子として育ててくれた長唄の小十郎さんと舞踊のお俊さんの志賀山流の看板のプライドも持っていたと思いますが、好きが一番だったのではないかと思います」
――そんな仲蔵さんを演じて、改めて感じたことは?
「僕自身も好きじゃないとできないなと思いました。実は今回の撮影も大変だったんです。前後編の作品を京都の夏にわずかひと月で撮って、しかもコロナ禍でお店はどこも空いておらず、食事はホテルの下のコンビニ。というのが毎日だったので、これは好きじゃないとやってられないなと。そういう厳しさが、映像にも出ているのではないかと思います(笑)」
取材・文=及川静