「主人公が必ず恋愛することに違和感があった」ドラマ「恋せぬふたり」制作陣が語る多様性の描き方

2022/01/09 19:00 配信

ドラマ

髙橋一生と岸井ゆきのがそれぞれ佇む「恋せぬふたり」キービジュアル (C)NHK

「アロマンティック」「アセクシュアル」という性的指向がある。大まかに言うと他者に対して恋愛感情を抱かないのがアロマンティック、他者に対して性的に惹かれないのがアセクシュアルとされている。セクシュアルマイノリティのひとつに数えられるアロマンティック・アセクシュアルだが、日本のフィクション作品で取り上げられることは今まであまり多くなかった。

しかし、1月10日(月)からNHKよるドラ枠で放映される「恋せぬふたり」(夜10:45-11:15、NHK総合)は、国内ドラマでは初めて“アロマンティック・アセクシュアル”の男女を主人公とし、「恋愛もセックスもしたくない」2人の同居生活を「ラブではないコメディ」として描くという。第一報が公開されると、SNSではアロマンティック・アセクシュアル当事者を含めた大きな反響があった。この企画がどのような経緯で生まれたのか、どんなメッセージをこめた作品にしていきたいのか。インタビュー前編となる今回は、制作統括・尾崎裕和氏と演出・押田友太氏に話を聞いた。

恋愛を描かないとドラマにならないのか?と疑問があった

羽(高橋一生)と咲子(岸井ゆきの)のスーパーでの出会い (C)NHK

――今回、アロマンティック・アセクシュアルの方を主人公としたドラマを作ることになった経緯を教えてください。

押田 個人的に、大きく二つの理由があります。僕は最初に赴任したのが広島放送局で、初めて自分で作ったドラマの主人公が部活を頑張っている高校生だったんです。そこで作家さんとの打ち合わせのときに、ドラマの本筋とは関係ないんですが、「やっぱり主人公が高校生だったら、恋愛要素は入れたほうがいいですよね」ということになりまして。そのときはドラマだとよくあることだし、それでいいとも思ってはいたんですが、一方で高校生が主人公なら必ず恋愛をするということに対して、なんとなく違和感もありました。その後、東京に来て大河ドラマや朝ドラに関わっていると、やっぱりヒロインと相手役というのがセットになっていて、恋愛要素が出てくるんですね。そんなこともあって、必ず恋愛を描かないとドラマにはならないのか?と漠然と疑問に思っていたんです。

また、それとは別の番組で、リスロマンティック(相手に対して恋愛感情は持つが、その相手から自分へ恋愛感情を向けられることは望まないセクシュアリティ)に関する取材をしました。お話を聞いた団体の方がアセクシュアルの方で、そのときに「日本のドラマって、必ず恋愛を描かないとドラマにならないんですかね」「そういう映画やドラマばかりだと、私たちの存在が否定されているように感じてしまうんです」とおっしゃっていたんです。今までなにげなく恋愛ドラマを作っていたけれど、それで誰かを傷つけていたこともあったのかもしれないと思って。その時の経験も、今回のドラマを企画するきっかけのひとつになりました。