――小池栄子さん演じる政子のこれまでの変化や今後のみどころを教えてください。
僕は、北条政子という人物が悪女として世の中に知れ渡っているということについて、とても不思議に思っています。例えば、織田信長がいろいろ言われているのは分かるのですが、北条政子が何をしたか、と言われると、悪女と言われるようなことはしていない気がしています。実際に、物語として描いていくと彼女は、当然妻として母としてやるべきことをやっているだけで、その上で、事態がどんどん悪くなっていく、ある意味、悲劇の主人公のように思っています。それは、今後も続いていくと思うし、小池さんもそういうつもりで演じていかれると思いますが、決して悪女ではなく、とても真摯な一人な女性だと思いますし、その政子の一生を描くことができることに喜びを感じています。
――山本耕史さん演じる三浦義村は、史実だと暗躍しますが今後のイメージを教えてください。
三浦義村は、本当に不思議な人で、どの局面においても何を考えているのか分からない、その面白さを活かしたいなと思っています。山本耕史さんには、土方歳三や石田三成など僕が脚本を務めた大河ドラマに出演いただいていて、今回は掴みどころがなく、でもなんかかっこいい三浦義村という役を演じてほしいと思いました。僕の中では、主人公の友人で、味方か敵なのかよくわからないけど、ずっと一緒にいる人物という役柄のポジションがあって。案の定、第25話まで描いてきましたが、三浦義村は未だにどんな人物か分かっていない。これは僕のアイディアですが、最後の最後に三浦義村は大博打を打とうと考えていて、もしかしたらラスボス的な意味合いで物語に関わってくるかもしれないです。
――現場に行かない意図は?
僕は、基本的に脚本として作品に参加する場合は現場に行かないです。脚本家は、その物語の最初の部分を作っている人間なので、どこか自分の中に物語の正解を持っています。なので、答えを持っている人間が現場に行くと、それを作っている皆さんはやりにくいと思います。いろいろと試行錯誤をしながら作っていてことで面白いものができていくと思うので、答えを持つ人間が現場にいてはいけない気がしています。
――物語が進んでいく中で成長したなと感じる登場人物はいますか?
自分の意図を超えて成長した登場人物は善児ですね。こんなに皆さんの心に残るキャラクターに成長するとは思ってもいなかったです。それはもちろん、演じてくださった梶原善さんの力だと思います。元々、善児を最終回まで残そうとは思っていなかったので、退場シーンをどのように描けば、皆さんが満足するだろうか、ということを考えて書きました。
あと、成長した登場人物は実衣です。最初は政子の話し相手として茶々を入れるだけのキャラクターのつもりでいました。しかし、宮澤エマさんが演じていることも大きく、いろいろな資料を調べていくうちに、彼女はもっと成長していくべき人物だと感じました。彼女の本番はこれからだと思います。
――物語の最後はイメージできているのでしょうか。
僕は大河ドラマを描く上で、主人公の人生が終わるときが最終回だと思っています。主人公が息を引き取った瞬間にドラマが終わるというのが、僕にとっての理想の大河ドラマです。