そんな青木との物語と並行し、亮太たちが部員を増やそうと取り組む様子も描かれた。5人のチーム戦となる男子団体戦に挑もうとしている亮太は、新たに入部したレン(高橋里央)と悠真(森篤嗣)と3人で出場はできる。だが、一勝したら土俵俵(どひょうだわら)を褒美として贈ってくれるという約束もあり、5人いれば勝率も上がるのではと考えたのだ。
そこで部員を集めるためのホームページ制作を助けてほしいと依頼されたのが、亮太のゲーム仲間である引きこもりのルイ。亮太の写真にダメ出ししたルイは、自ら撮影に訪れると、亮太も顔を見たことがなかったため盗撮犯と間違われてしまう。
そして、忘れてしまったカメラのレンズを取りに密かに稽古部屋に再びやってきたとき、妻に家を追い出されて行く当てのなかった青木と鉢合わせ。そこに穂香と亮太が帰って来て、2人は稽古部屋に閉じこもる。
互いのことを話し始める2人。「8年目にやっと仲間ができたんだ。そして試合にも初めて優勝したんだ。それからというもの、俺の人生は奇跡のようにキラキラ輝いていた。そう、奇跡だよ…だから、一瞬にして終わっちゃったんだ」と振り返る青木に対し、現在大学8年生であると明かしたルイこと加藤俊(佐藤緋美)は「俺は逆っすね。就活失敗して、友だちに会うのも面倒になっちゃって、気が付いたら8年目で1人になってました」と言った。
そんな俊と青木は部屋を出る前に、土俵で四股を踏む。「青年、人生に迷ったら、四股を踏め。四股踏んで地固まる、だ」と青木は言うのだった。
熱くなれるものに本気で挑む青春の輝き。相撲一筋の穂香はもちろん、卒業単位がきっかけの亮太や、レンや悠真も、稽古に打ち込む日々だ。そんななかで、かつて相撲に青春をかけた青木の言葉には心打たれる。
また、緊張するとお腹をくだすという青木の弱点は30年経ったいまも健在だった。演じる竹中は、シリアスな演技もお手の物だが、笑いの演技のセンスも抜群。本作ではその笑いと相撲への熱いものを抱きつつも、弱さもあるキャラクターで物語に華を添えた。
ラストで穂香は、将来、相撲をオリンピック種目にする、そのときは男子も女子も同じ土俵で相撲が取れるようにしたいという自伝に書かれていたこともうそなのかと問い掛けた。青木は「うそじゃないよ、俺の夢なんだ」と答えた。その言葉に穂香は、「やっぱり、わ(私)の先生です」と言うのだった。
映画「シコふんじゃった。」では、女子マネージャーが男子部員のふりをして試合に出る場面があったが、本ドラマでは穂香が取り組む女子相撲もしっかりと描かれる。青木が映画とドラマの世界をつなぎ、30年を経た現代の物語が大きく動き始めた。
◆文=ザテレビジョンドラマ部
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)