阿部寛“M”と尾野真千子“F”の再会、そして宮藤官九郎“フクオ”の優しいうそに胸熱<すべて忘れてしまうから>

2022/11/03 20:31 配信

ドラマ レビュー

「すべて忘れてしまうから」第8話は、ディズニープラスのスターで配信中(C) Moegara, FUSOSHA 2020

阿部寛が主演を務めるドラマ「すべて忘れてしまうから」の第8話が11月2日に配信された。第8話では、ついに“M”(阿部)と“F”(尾野真千子)が再会を果たす。意外な形での再会シーンに、SNS上では「シュールすぎて面白い」「次回の2人のやりとりが楽しみ」といった笑いと期待の反応が。さらに今回は、フクオ(宮藤官九郎)の“優しいうそ”も明らかになり、思わず胸が熱くなった。(以下、ネタバレを含みます)

同ドラマは、今最も話題の作家の1人である燃え殻のエッセイを国内トップクリエイターがドラマ化した話題作。阿部演じる作家“M”を主人公に、消えた彼女“F”(尾野)を巡る、大人の心に染みわたるミステリアスでビタースイートなラブストーリー。ディズニーの公式動画配信サービス・ディズニープラスのコンテンツブランド「スター」で毎週水曜昼4:00より独占配信中だ。

物語の主人公となる“M”を阿部、“M”の失踪した彼女“F”を尾野が演じる他、“M”の行きつけであり、物語のキーとなる舞台“Bar 灯台”のオーナーをChara、同じバーで働く元バンドマンの料理人役を宮藤官九郎、“F”の姉役で酒井美紀が出演。さらに、異例の試みとしてエンディング楽曲を毎話異なる10組のアーティストが担当している。

優しいうそとイケないうそ

「すべて忘れてしまうから」第8話より(C) Moegara, FUSOSHA 2020


“Bar 灯台”で飲んでいる“M”の元に編集者の澤田(渡辺大知)が現れ、既婚者の彼女との不倫が彼女の夫にバレてしまい、地方で暮らす相手の両親から呼び出されたため、急きょ飼い猫を預かってほしいと頼まれる。

渋々預かった“M”だったが、翌朝、部屋にいるはずの猫の姿がない。猫好きのフクオ(宮藤官九郎)に頼ると、フクオはあっさりと猫を見つける。見つけてくれたお礼にフクオを行きつけの喫茶店に連れてきた“M”は、フクオから本当は泉(青木柚)の父親ではないことを打ち明けられ、「誰かが(父親の)代わりになれるんだったら、それでいいじゃん。そのうそには値打ちがあるよ」「先生もさ、もう少し誰かのうそに付き合ってあげたら?」と諭される。

一方、“F”は心配して連絡してきた姉(酒井)と再会。「半年も何してたの?」と尋ねる姉に、“F”は「何やってたんだろうね。たくさんお金使って時間潰したけど、なんか苦しかった」と吐露。その後、“F”が家のリフォーム代を渡そうとするが、姉は「もし受け取ったら、あんたが私を裏切ったことを忘れちゃいそうだから」と固辞する。ややピリッとしたムードの中、街頭ビジョンに“M”が出演するテレビ番組が流れると、2人は気取ってインタビューを受ける“M”の姿に思わず吹き出してしまう。

フクオと別れた“M”は浅草の演芸場でマジックショーを観賞していると、マジシャンに指名されて壇上でマジックに参加することに。ボックスに入って剣を刺されていると、観客席に“F”が入ってくる。

意外な再会にSNSも沸く

「すべて忘れてしまうから」第8話より(C) Moegara, FUSOSHA 2020


嶋田久作演じるマジシャンが、本当に浅草あたりの演芸場にいそうな“いかにも”な感じだったのはクスッと笑えたが、それはともかく、久々の再会シーンはやはり胸熱だった。壇上からビックリした顔で見つめる“M”と、何事もなかったかのようにしれっと入ってきて、“M”の姿を見てクスクス笑う“F”。この再会シーンを見ただけでも2人の関係性が見て取れるようで、大人の2人に使う言葉ではないのかもしれないが、とてもほほ笑ましかった。

一方で、今回のサブタイトル「その嘘には値打ちがあるよ」の通り、第8話は「うそ」も大きなテーマに。不倫というパートナーへの裏切りのうそはイケないうそだが、フクオの“優しいうそ”にはジーンときた。それこそ感動の再会を果たして、タメ口でしゃべり合って、これから父子の時間が流れていくんだなと思ったら、実は本当の父子じゃないという…。「先生もさ、もう少し誰かのうそに付き合ってあげたら?」という言葉もかなり刺さった。

「うそも方便」という言葉があるが、必ずしも何でもかんでも本当のことを言う、知る必要はないし、“知らない方が幸せなこと”というのも確かに存在する。せっかく再会できたと思ったのにまたハシゴを外されてしまったら、泉の受けるダメージは計り知れないだろうし、自分が黙っていれば平穏に暮らせるのであればそうしてあげたい、というフクオの気持ちはとてもよく分かる。ハナからその覚悟を決めているようだが、泉のことを思えばこの“優しいうそ”は墓場まで持っていってあげてほしい。

残すところあと2話。再会を果たした“M”と“F”がこれからどんなやりとりを繰り広げるのか。次回予告の最後で「えっ…マジか」と“M”がぼうぜんとしているところや、「Bar 灯台」の人間関係など、まだ一波乱、二波乱ありそうで期待は高まるばかりだ。

もちろん、その気持ちにうそはない。

◆文=ザテレビジョンドラマ部