その「下町ロケット」シリーズの間、2017年に放送された日曜劇場「陸王」にも竹内が出演している。こちらも池井戸の小説が原作。100年続く老舗の足袋製造業者「こはぜ屋」は、時代の変化に伴い、足袋の需要が年々減少していて、従業員も最盛期の10分の1ぐらいの20人ほど。銀行から融資を渋られるぐらいになっており、その打開策としてマラソン足袋の開発をスタートさせた。竹内が演じたのはダイワ食品陸上部の茂木裕人。大学時代に箱根駅伝5区、険しい登り坂を走った有力選手で、期待の新人として注目されていたが、挑戦したフルマラソンで足を痛めてしまい途中棄権。大手シューズメーカー「アトランティス」からサポートされていたが、故障したことにより、風向きが変わり、苦境に立たされることとなった。
物語の主役は“こはぜ屋”だが、社長の宮沢(役所広司)がマラソン足袋「陸王」の開発に踏み切ったのは、そのフルマラソンで茂木が足を痛めながらもゴールに向かおうとする姿に胸を打たれたからであり、ある意味、このドラマのもう一人の主人公と言える重要な役だった。足袋製造においては老舗で実績があるがランニングシューズにおいてはゼロからのスタートとなるこはぜ屋。箱根駅伝では栄光をつかんだが、フルマラソン挑戦で故障し、原因が“走法”ということでフォーム改造を余儀なくされた茂木。銀行から融資を断られ苦境に立つこはぜ屋とアトランティスからのシューズの供給を絶たれた茂木。
ソールに適した素材「シルクレイ」を見つけたり、名シューフィッターが寄り添ってくれたり、それぞれ良いこともあったりするが、山あり谷ありという感じで、3歩進んで2歩下がるような状況がシンクロしていて、視聴者としてはもどかしくもあるが、双方応援したくなるものだった。茂木を演じた竹内の良さが十二分に発揮されており、挫折を知ったからこその“強さ”と信頼できる人たちと出会ったことで培われる“思いやる気持ち”が、視聴者の気持ちを引きつけていった。
そして11月23日(水)よりディズニープラスで配信される日曜劇場「テセウスの船」(2020年)は、満を持しての主演作となった。東元俊哉の同名コミックを映像化した作品で、竹内は平成元年生まれの主人公・田村心を演じている。心が生まれる直前、平成元年に起きた謎の連続毒殺事件。心の父親で当時警察官だった佐野文吾(鈴木亮平)が容疑者として逮捕され、死刑を求刑された。心は母親・和子(榮倉奈々)から「うちの家族に父親はいない」と言われて育てられ、世間から隠れるようにして生きるしかない状況に追い込んだ父・文吾を憎んできた。
しかし、心の妻・由紀(上野樹里)の“冤罪(えんざい)を訴え続ける父親を信じて”という言葉をきっかけに、父親のことを調べ始めた。事件が起こった村に足を運んだ時に猛吹雪に見舞われ、気付くと、平成元年の事件が起こる2週間ほど前にタイムスリップしていた。事件前の父親や家族と対面した心は、家族がみんな笑顔で過ごしていることに驚き、それだけ事件の影響が大きかったことを実感。父親・文吾に対しては、殺人犯という色眼鏡で見てしまっているために全ての行動が怪しく感じてしまう。
21人毒殺事件の前にも同じ村でいろんな事件が起こっていたが、それを食い止めようとする心の行動は村の人たちや文吾から見ると怪しく感じられ、あらぬ疑いをかけられてしまう。何度か現在と過去を行ったり来たりする間に、真相が見えてくるが、父親の無罪を立証したり、事件を食い止めることはそう簡単ではなかった。竹内が演じる心は思い込みの激しい性格ではあるが、熱意があって、正義感も満ちている。これまでに演じてきた役とどこか共通する部分があるのが分かる。“真っすぐ”であるがゆえに“不器用”な部分があるということも含めて。
他にディズニープラス配信作ではないが、日曜劇場では「ブラックペアン」にも研修医・世良雅志役で出演しており、こちらも真っすぐな性格で、医療に対して熱い思いを持っている役だ。日曜劇場のドラマは、竹内の良さをさらに引き立て、作品ごとに俳優として成長・進化するきっかけを作ってくれているように感じる。
2022年8月に公開された映画「アキラとあきら」では横浜流星とW主演を務めた竹内。この作品が池井戸の小説が原作ということもあり、日曜劇場で培ってきた経験と成長がこの作品にも多く反映されている。“俳優”としての竹内の軌跡を楽しむためにも、今回の配信ラインアップに入っている「下町ロケット」「陸王」「テセウスの船」はぜひチェックしてもらいたい。
◆文=田中隆信
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