“医療ヒューマンドラマ”の金字塔「Dr.コトー診療所」映画化を機にその感動の魅力を紐解く

「Dr.コトー診療所」ビジュアル (C)山田貴敏 (C)2022映画 「Dr.コトー診療所」製作委員会

俳優の吉岡秀隆が主演を務めた2000年代の国民的大ヒットドラマ「Dr.コトー診療所」(フジテレビ系)。その16年ぶりの新作で、初の劇場版となる映画「Dr.コトー診療所」が12月16日(金)より全国公開される。あわせてTVerでは現在ドラマシリーズ全26話を一挙配信中。 “医療ヒューマンドラマの原点にして頂点”と名高い本シリーズの魅力を振り返る。

フジテレビが魅せる「医療ヒューマンドラマ」の原点


2003年にフジテレビの木曜10時枠で放送された連続ドラマ「Dr.コトー診療所」(全11話)。本作は累計発行部数1200万部を超える山田貴敏の同名漫画をもとに、東京から僻地の離島・志木那島の診療所に赴任してきた外科医の“Dr.コトー”こと五島健助(吉岡秀隆)と、島の人々との交流を通して命の尊さを描いた医療ヒューマンドラマだ。第1期は平均視聴率19%、最高視聴率22.3%の大ヒットとなり、翌2004年に2度の特別編を放送。そして、2006年には待望の第2期「Dr.コトー診療所 2006」が放送され、前作を上回る平均視聴率22.4%、最高視聴率25.9%という数字を打ち出した。

フジテレビといえば、昔から医療ドラマに強い印象がある。観月ありさと松下由樹の軽妙なやりとりが人気を博した「ナースのお仕事」(1996年)、唐沢寿明主演で大学病院での激しい権力闘争を描いた「白い巨塔」(2003年)、山下智久や新垣結衣、戸田恵梨香など豪華キャストが救急救命に奮闘する若き医師を演じた「コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命~」(2008年)など、高視聴率を記録した医療ドラマのタイトルを挙げれば枚挙にいとまがない。

そんな中でも人気なのが“医療ヒューマンドラマ”だ。簡単に特徴を挙げるならば、主人公となる医師やナースが患者の病気や怪我を治して終わりではなく、医療を通じて患者やその家族の苦悩や生活上の困難にも目を向け、それによって主人公自身も医療従事者として、またひとりの人間として成長を果たしていく……という点にあるだろうか。昔の医療ドラマと比べて、主人公が人の命を救うスーパーヒーローのような存在として描かれることが少なく、不完全さも併せ持っている人物として描かれることが多い。また患者一人ひとりの人生にもしっかりとフォーカスされ、それが主人公の生き方にも影響を与えていく。

病気ではなく人を診る、人間愛に溢れた医師のドラマ


そんな医療ヒューマンドラマの原点にして頂点ともいえるのが、「Dr.コトー診療所」だ。物語はコトーが“島唯一の医師”として、与那国島をモデルとした志木那島の診療所に赴任してくるも、看護師・彩佳(柴咲コウ)をはじめとした島民からなかなか信頼を得られないところから始まる。だが、医療設備が整っていないことから本土の病院でしかなし得なかった難しい手術や治療を成功させていくと、その医師としての確かな腕とあたたかい人柄が知れ渡り、コトーは島民から慕われるようになっていく。

まさにコトーは患者の心に耳を傾け、その家族も含めた治療後の生活も一緒に考えてくれる“人を診る”医者だ。そんなコトーにも、とある研修医が起こした医療ミスの責任を取らされ、大学病院を追われた過去が。コトーの傷ついた心も島民との触れ合いにより癒されていくが、医師と患者を超えた家族のような結びつきが生まれることでまた、医師としてではなく一人の人間としての葛藤も生じる。単なる医療ドラマではない、人間愛に溢れた作品だ。

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