タレント・女優として活躍し、昨年は初のエッセイ集『母』が話題となった青木さやかが、読者から寄せられた「親子」に関する悩みに答える企画の第2弾。今回は、母親から「ダメな娘」と言われて育ったが、自分の娘に同じように嫌なことをしてしまわないだろうか、という相談。「自分に自信がない」「感情的になってしまう」そんな自分とどう付き合っていくか、青木さやかがいまも日々実践している方法とともにアドバイスする。
[はじめまして!5歳の幼稚園・年中の娘を育てている母です。
娘を育てていて、私が昔から実の父母からひどい扱いを受けてきたことをよく思い出すようになりました。特に母は心が不安定な人で、子どもの私には制御不能でした。いつも「ダメな娘」「落ちこぼれ」と言われ続け、劣等感の塊で大人になりました。
私の今の一番の悩みと心配は、娘に何か注意するときにいつも、私自身が父母からされてきた事がフラッシュバックして、同じことをしてしまうのではないか、同じことを言ってしまうのではないか、という衝動を抑えていることです。青木さんは、お母様にされたり、言われて嫌だったことを娘さんにしてしまわないように、どのような心がけをしていましたか?小さなことでも構いませんので、何かアドバイスを頂けましたら幸いです。(P.N. おでこちゃん 42歳)
はじめまして。おでこちゃんさんはお子さんの頃、大変な思いをされてきたのだろうと読ませていただきました。
不安定な母親、わたしもそのような記憶があります。おかげさまで、わたしも不安定な部分があるようです(笑)。落ちこぼれとは言われなかったですが、褒めてもらえず自信のないオトナになったものだな、と思っております。
親の影響というものは、ものすごく大きいですよね。わたしは、母との確執を解き、母を嫌いではなくなったのですが、じゃあそれで全て問題解決かというとそういうわけではなく、積み重ねてきた自信のなさが、急に自信満々に変わるわけではありませんでした。
「自分が好きではない」ということは、自分で自分を満たせないのですよね。かつて先輩から、自分を満たしたうえで溢れてきたものがあって、初めて他の人を満たすことができるのだと聞いたことがあります。確かに!自信のないわたしには、娘をただ愛することが、なかなか難しいわけです。
ですので急速に自信を持ちたい。「自信を持つ」ことがどうしたらできるのか、暇さえあれば、様々な角度から自信を持たせるためのことに手を出している、現在のわたしです(笑)。そんなわたしの話が参考になるかわかりませんが(この発言がすでに自信のなさを物語っている…)。
わたしは母からされたこと、言われたことがトラウマのようになっていました。思い出したくない過去だったのです。でも、母との確執を解いてから、そこに変化が生まれました。過去の記憶はなくなりません。ですが、それが「辛い記憶」ではなく、「ただの記憶」になったのです。思い出しても平気になったのですよね。それは、わたしにとって大きな変化でした。
娘との関わりの中で、母を思い出すことは多々あります。たとえば、声色やトーン、言い方。母から言われてイヤだったような言い回しをつい娘にしてしまう、そのたび、わたし自身の中に母を見つけることがよくあります。母が嫌いだった頃は、自分の中に母を見つけると、「いやーーー」と、全身で自分を嫌悪する感覚がありました。そのたびに自分を嫌いになっていくようで、とても辛かったです。なので、母を反面教師にして、似ないように、同じことをしないように、とそれを一番に考えておりました。
さて、今はどうかといいますとやはり、声色やトーン、言い回しが、母を彷彿とさせるようなものになることは同じようにあります。ですが、母が嫌いではなくなってから、自分が母に似ていることが嫌ではなくなったのです。娘から、「今の言い方、おばあちゃんみたい」と言われても、懐かしいね、と返せるようになりました。
「わたし、おばあちゃんみたいにキツい言い方してた?ごめんなさいね、はははは」
「おばあちゃんよりママの方がキツいよ!おばあちゃんがかわいそう!」
「ひどい〜それはさすがにないでしょう!」
なんて、冗談混じりに話せるようになったのです。
事実は消えませんが、忘れたい過去ではなく、思い出しても平気な過去になったこと。これは、大きな収穫でした。
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