柳楽優弥が主演を務めるヴィレッジ・サイコスリラー作品「ガンニバル」が12月28日(水)に世界同時配信される。同作は、2018年に連載がスタートした二宮正明のサスペンスコミック「ガンニバル」を実写ドラマ化したもの。都会から遠く離れた山間にある供花村(くげむら)が物語の舞台で、ある事件を起こして村の駐在として左遷された警察官・阿川大悟が主人公だ。一見、犯罪とは無縁に思われるのどかで平和な村だが、一人の老婦人の奇妙な死をきっかけに、大悟は少しずつ村の異常性に気付いていく。そして、「この村では人が喰われているらしい」という衝撃的なうわさも…。そんな本作をエンタメライター・田中隆信氏が一足先に視聴し、独自の視点で見どころを紹介する。(以下、ストーリーのネタバレを含みます)
実写化は不可能と言われていた作品が、ディズニープラス「スター」のオリジナルシリーズとしてついに完成。12月28日の配信に先駆けて本編冒頭映像(3分)も公開されているが、冒頭部分だけでも異様な緊張感、不穏な空気が伝わってくる。主人公・大悟を演じるのは柳楽、大悟の妻・有希を吉岡里帆、供花村を支配する“後藤家”の次期当主・後藤恵介を笠松将が演じる。
大悟は、妻・有希と娘のましろ(志水心音)と3人で車に乗って供花村にやってきた。のどかで牧歌的な風景が広がる中、吊り橋を渡って村の中へ。村人のリーダー的な存在のさぶ(中村梅雀)を中心に、大悟に村の案内をしたり、野菜や果物をくれたり、親切に接してくれるが、後藤恵介が「祖母の銀(倍賞美津子)が熊に襲われた」とやって来た。見に行くと、そこには銀の無惨な姿が。ここで早くも大悟と後藤家が衝突を起こしてしまう。
それぞれが何かを抱えている、あるいは“隠している”。それがこのドラマの奥深さ、闇深さでもある。まず、主人公の大悟。ある事件を起こして左遷されてきたわけだが、基本的には真っすぐな性格。しかし、それは“自分にとっての正義”に対しての真っすぐさであって、他の人から見ると自分本位な性格だったり、融通の利かない面倒な人間といった感じ。
恵介と衝突した時の様子も、恵介らは「熊に襲われた」事故だと主張するが、大悟は腕にあった歯形が“角度的におかしい”と気付き、遺体が熊に襲われたものではないとして「事件」として扱い、無線で連絡を取った。この場合は大悟が正しく、周りの空気に流されないところは長所でもある。
娘のましろはある事件をきっかけに笑うことも喋ることもできなくなった。有希がキツめの言葉を時々投げてしまうが、娘とコミュニケーションが取れないいら立ちが積もり積もった結果、そういう性格になっていたのだろう。
供花村の人たちは大悟たちの前では笑顔でいることが多いが、閉塞的な空間の中にずっといるからか、どこか卑屈なところがあったり、変に団結力があったりする。後藤家の人たちのように暴力や目に見える圧力をかけてくるわけではないが、にこやかにやんわりと同調圧力をかけてくる感じもあるのでかなりやっかい。現実社会ではある意味そっちの方がやっかいな場合も多いだろう。
後藤家は供花村の中で特別な存在。後藤家が村の経済を支えており、後藤家だけで一つの世界が出来上がっている。昔から続く独自のしきたりがあったり、触らぬ神に祟りなしではないが、関わりを持たずに済むのであれば極力避けたい人たちである。
そして、前の駐在・狩野(矢柴俊博)。公開されている冒頭の映像を見ても分かるように、明らかに後藤家と何かトラブルがあったはずなのに、「ギャンブルにハマって失踪したダメな駐在さん」という扱いにされている。大悟たちは狩野が住んでいた家で暮らし始めるが、狩野が何か書き込んでいたノートが残っていたり、柱に「ニゲロ」という文字が刻まれていたり、メッセージらしきものが残ってそう。狩野の妻と娘ものちに登場するが、娘のすみれ(北香那)はなんとか大丈夫そうだが、妻の方は精神的に不安定な状態のまま。
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