――舞のシーンについてお聞かせください。
非常に呪術的に感じるようなシーンになっているかと思います。それが今川軍の士気を高め、一つの理想郷を感じるようなシーンになっているといいなと思います。こうした舞のシーンには、セリフがないので役者に全面的に任されることが多く、「のぼうの城」の時は「田楽を舞う」とだけ書いてあって(笑)。今回は、今川軍の士気が上がるようなスケール感の大きさを出すということを試みましたし、野村萬斎でなければできないジャンルかと思って演じました。
――氏真にわざと負けた元康(のちの家康)に怒るシーンは、まさに父親のようでしたが。
間違ったことを野放しにしていると絶対後に表れてしまうので、我が子にとって不利であろうとも「正しいことは何なのか」ということをちゃんと説く部分は共感できます。一つの道を説くというのが義元のキーワードな気がしますので、間違ったことを間違ったままにするのではなく、そこを正そうとする、そういう意味で人格者としてとてもかっこよく描かれていると思います。見て下さる皆さんがどのように受け取ってくれるのか楽しみでもあります。
――家康と義元は父と子の関係性なのか師弟関係なのか、どのような関係性だと捉えていますか?
家康との関係性は師弟関係というものに重きがあると思います。義元は自分の目指す道がはっきりしているので、国を治める人間として嫡男である氏真に跡を継がせて、元康(のちの家康)が氏真を支えてくれたらいいなと思っていたと捉えて演じていたので、跡継ぎの我が子には厳しく、支えてほしいと願う元康にはちゃんと教育していたのだと思います。
――黄金の甲冑をご覧になった時の印象とそのシーンの思い出はありますか?
義元が元康(のちの家康)に甲冑を渡すシーンが私のファーストシーンでした。いきなり家臣の皆さんがたくさんいる中での撮影で少し緊張しました(笑)。黄金の甲冑は戦場で元康を目立たせるために着させていますが、良い解釈かもしれないですけど元康(のちの家康)に一つの試練を与えて、それをかいくぐってこそ生き残れる人物になるという意味も含んでいたと思います。
周りの家臣団も「おぉ!すごい」と思いながらも、後で「もしかしてこれすごく目立つのでは?」といったリアクションになっているので、面白くオチが付くように、さもすごいものだぞという空気感を出して紹介した覚えがあります。