松山ケンイチと長澤まさみが初共演する映画「ロストケア」が3月24日(金)に公開となる。老人42人を殺害した心優しい介護士・斯波(松山)と、彼の罪を立証しようとする検事・大友(長澤)の攻防を描く本作。2022年秋クールドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」での熱演も記憶に新しい長澤にインタビューを行った。冤罪事件を追うアナウンサー、介護問題による殺人を追及する検事と難役続きの長澤だが、リアリティのある役柄を求められることは「うれしい」と語る。30代半ばを迎え、ますます俳優としての輝きを増す彼女の今の思いとは。
――「ロストケア」は、介護を巡る問題に切り込んだ作品です。まずは、出演を決めたきっかけを教えてください。
近年、介護殺人が増えていますが、私自身もどこかで引っかかっていて気になる問題でしたので、この作品の台本をもらったときに、すごく惹かれるものがありました。「ロストケア」は前田哲監督と松山ケンイチさんが長年あたためてきた作品なので、そんなストーリーにもすごく心動かされて、ぜひ参加したいなあと思いました。
――長澤さんは、普段ご家族と介護問題についてお話されますか?
もともと、先々のことについてはよく話す家庭だと思います。例えば母と「将来もし体が大変になったら、どうなっていくのかな?」みたいなことを話したり、自分の人生について語ったりすることが常日頃ありますね。そういうことを家族と話し合うのっていいなあと、私自身実感していて。急に介護の問題にぶち当たって、行く先を考えなきゃいけなくなる前に、予習しておくのはすごくいいことなんじゃないかと。この作品がそんなきっかけになるといいなと思います。
――今回長澤さんは、介護士でありながら42人を殺めた殺人犯・斯波宗典(松山ケンイチ)を裁こうとする検事・大友秀美を演じています。演じるうえで、大切にしていたことは?
作品を観ている人に、「この人を信じたい」と思ってもらえるといいなあと。大友はこの作品の“観客目線”だと思うから、観ている人が大友を受け入れられないと、物語に入れないと思うので。観客に信頼してもらえるようなお芝居ができれば、大友自身の性格や人物像は自ずと作られていく気がしました。
――演じてみて、介護というものに対して今どう感じてますか?
昨日もちょうど監督や松山さんたちと話していて「難しい問題だよね」って。介護そのものもそうですけど、ヤングケアラーとかパワハラとか、いろんなところに問題が散らばっていて。同じ国民だからこそ支え合えるような環境が、もうちょっとできるといいのかなと思いますね。
――劇中では、斯波を演じる松山さんと対峙するシーンが多かったと思うのですが、いかがでしたか?
いや、すごかったですね、松山さん。純粋な目でこっちを見てくるから。その瞳が美しすぎて、吸い込まれそうになって……すごく不思議な気持ちになりました。こっちは犯人に対して事情聴取をするという立場で向き合ってるのに、斯波の言葉に侵略されていく感じがあって。すごい俳優さんだとはわかっていましたけど……本当に「こんなきれいな瞳をした俳優見たことない!」って思うぐらいきれいな目をしてたんですよ(笑)。なんか……恋にも似たような感覚に陥って。
――恋にも似たような感覚?
斯波と会話していくうちに、大友は自分自身も持つ悩みや心理に触れていくんですよね。そこで検事としての意思が揺らいでいく。斯波が言ってることって、間違ってはいないと思うんですよ。誰でも斯波みたいな状況に陥るかもしれない怖さを秘めてるからこそ、私自身、催眠術にかかったような状態になって。それが、恋に落ちた感覚と似てる気がして面白かったんですよね。すごく色っぽくていいシーンだなと、演じながらなんとなく思ってました。
――大友は、迷ったり悩んだりと揺らぐキャラクターですよね。長澤さんご自身はこの役を演じていて、大友の“迷い”に共感した部分もありますか?
理解はできますね。表と裏というか、人には絶対に言えない自分だけの隠しごとって、きっと誰しもあると思うんです。それを律して、自分のなりたい自分になっていくのが“人”なのかなと。それは繕ってるとか、そういうことではないと思っていて。そんな“人”に斯波が本質をついて向き合ってくるから、大友は揺れるだろうなとは思いました。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)