鈴木亮平らが魅せる”戦隊ヒーロー”のような安心感のある芝居<TOKYO MER~走る緊急救命室~>

2023/04/12 18:30 配信

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「劇場版 TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」が4月28日(金)に公開(C)2023 劇場版『TOKYO MER』製作委員会

動画配信サービス「TVer(ティーバー)」にて、鈴木亮平が主演を務める映画「劇場版 TOKYO MER~走る緊急救命室~」の公開記念特集が開催中。2021年7月期にTBS系の日曜劇場枠で放送されたドラマ版が一挙配信されている今、改めて最終回の平均世帯視聴率19.5%を記録した本作の魅力を紹介する。

まるで戦隊ヒーロー!救命医療チーム“TOKYO MER”とは?


コロナ禍、自らも感染のリスクを負いながら、医療の最前線で感染者の治療に当たった医療従事者たち。彼らへのリスペクトで溢れていたのが、2021年7月期に放送されたTBS日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」だ。

“TOKYO MER”とは、最新の医療機器とオペ室を搭載した大型車=ERカーで重大事故・災害・事件の現場に駆けつけ、負傷者にいち早く救命処置を施す救命医療チームのこと。

チーフドクターの喜多見幸太(鈴木亮平)を筆頭に、厚生労働省の官僚でありながら医師でもある医系技官の音羽尚(賀来賢人)、「人の命を救いたい」という純粋な思いに突き動かされる研修医の弦巻比奈(中条あやみ)、救命救急の知識と経験が豊富で喜多見の右腕として活躍する蔵前夏梅(菜々緒)、穏やかな性格で副チーフとしてみんなを温かく見守る麻酔科医の冬木治朗(小手伸也)、機械や車の整備が得意なメカオタクの臨床工学技士・徳丸元一(佐野勇斗)、高度な看護技術を学ぶためにベトナムから来日した看護師のホアン・ラン・ミン(フォンチー)の計7名で構成されている。

危険極まりない現場でそれぞれの力を発揮する彼らはまるで戦隊ヒーローのよう。そして、その姿は冒頭で述べた医療従事者たちの姿とも重なり、多くの人に感動を与えた。


「彼らならきっと全員救える」と思わせてくれる役者たちの芝居


TOKYO MERのミッションは“一人も死者を出さないこと”だが、トンネルの崩壊事故や凶悪犯による立てこもり事件、山中の遭難事故、夏祭りでの爆発事故など、毎話壮大なスケールで描かれる事故現場はどれも絶望感を与えるものばかりである。それでもなお、「彼らならきっと全員救える」と視聴者に思わせてくれるのが医療従事者たる安心感を携えた役者たちの芝居だ。

特に主演の鈴木亮平は喜多見を演じるにあたり、相当医療知識を学んだのだろう。もともと、そのがっしりとした体格と穏やかな笑顔に安心感がある鈴木だが、それだけじゃない。
専門用語に溢れた台詞をスラスラと読み上げ、手元だけ本物の医師を使うことが多いオペシーンでも自らメスを握り、見事な手さばきを披露。そのため、「設備が整っていない戦地で救命活動に従事していた経験があり、技術はもちろん、緊急時における判断力に優れている」という設定に全く違和感がなかった。

一方で、「待っているだけじゃ、救えない命がある」というポリシーで危険を顧みず事故の現場に足を踏み入れる喜多見に当初は反発する声も。しかし、その強い信念はやがて周りの人たちの心を少しずつ動かす。そして全員で死者ゼロを目指し、最後は喜多見が国際医療機関の医師団を辞めてから、MERのチーフドクターに就任するまでの“空白の1年”に関係するラスボスに立ち向かっていくという、少年漫画さながらの展開に胸を熱くさせられるだろう。

物語が進むたびにMERメンバーがそれぞれ抱える事情も明らかになってくるのだが、特に興味深いのがセカンドドクターの音羽。官僚と医師という2つの顔を持つ彼もまた、最初は喜多見に強く反発していた。

なぜなら実のところ、音羽はTOKYO MERの創設者である東京都知事・赤塚梓(石田ゆり子)と対立する厚生労働大臣・白金眞理子(渡辺真起子)が派遣したスパイで、MERの解体を命じられていたからだ。本作はそんな音羽の成長物語としての側面を持っている。シリアスな役からコミカルな役まで幅広くこなす賀来賢人が、全11話の中でグラデーションのような変化を見せていく音羽という奥深いキャラクターを編み出した。

映画の完成報告会見で語る賀来賢人撮影:田中隆信


また音羽と喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)の関係も見逃せない。「王様のブランチ」(TBS系)や「1億人の大質問!?笑ってコラえて!」(日本テレビ系)など様々な番組でMCを務め、老男女問わず多くの人から愛される彼女を配役したのはお見事としかいいようがなく、涼香は本作におけるヒロインのような役割を担った。

小児患者とその家族をサポートするNPO法人のスタッフで、兄の喜多見が勤務する東京海浜病院に頻繁に出入りする涼香。いつも笑顔で喜多見やMERの活動を応援してくれる涼香は、緊迫した医療現場で働くMERメンバーの心の癒しとなっていく。一方、喜多見の過去を探る音羽に対しては警戒心を持っていた涼香だが、ある事件をきっかけにその距離はぐっと縮まる。そこからの少々歯がゆくもある二人のピュアなやりとりにキュンとさせられた。だが、その思いもよらぬ結末に誰もが絶句させられることとなる。

本作が私たちに届けるのは、「誰もが誰かのヒーローである」というメッセージだ。医療現場ではヒーローである喜多見や音羽にとっては涼香が心の“ヒーロー”であるように、誰もが誰かのかけがえのない存在であり、無駄な命は一つもないということを教えてくれた。