「虫けら」発言を機に万太郎とよそよそしい間柄になり、視聴者からも警戒されてしまった田邊。だが、そんな田邊も自宅ではこうして妻と穏やかな会話を交わし、笑顔を見せる。そしてその横では、田邊が愛するシダが風に揺れている。
これが「らんまん」という作品の大きな魅力の一つだ。万太郎を当初「小学校中退」と蔑んだ徳永(田中哲司)や大窪(今野浩喜)も、それぞれ悩みや葛藤を抱えながら生きていることが描かれてきた。誰もが、“根っからの悪役”ではない。聡子というキャラクターは、そんな田邊の悪役ではない一面を見せるために必要な存在なのだ。
その視点は、万太郎が植物を見る視点そのものだ。「どんな草やち、同じ草は一つもない。ひとりひとりみんな違う」「雑草という名の草はない」という思いが、「らんまん」という作品全体に流れている。
とはいえ81回では田邊が聡子に「槙野はもう二度とここへは来ない」と語り、同回ラストでは雷鳴が轟く不穏な雰囲気の中、田邊が万太郎の作った図譜を手にする場面も描かれた。万太郎と田邊の関係性、このまますんなりとはいかなそうだ。
7月25日(火)は第82回を放送する。園子がすくすくと成長するある日、万太郎たち長屋の面々はゆう(山谷花純)に誘われ出かけることに。道中、万太郎は大きな池を見つけ、植物採集を始める。