――松山ケンイチさん演じる本多正信の再登場はいかがですか?
敵が殿を取り囲む状況の中、正信が現れました。また“敵の軍師”という立場ではありましたが、半蔵としてはそもそも正信から誘われて今のポジションにいる訳ですし、まだ会話が通じる相手。正信に救いを求めるしかない状況でしたから、彼がどう動くかをすごく探っていただろうと思います。ただ、もし正信が救ってくれようとしても、正信と我々の関係を敵に悟られたら、せっかくの作戦も失敗に終わってしまうかもしれないという緊張感も感じていて。
正信が現れた時、半蔵は牢屋の陰に顔を隠しました。“何とか殿を救ってくれ”と祈り、わずかな望みを掛けたのかなと想像しました。視聴者の皆さんは、「正信は味方か敵かどっち?」と思われるかもしれませんが、半蔵としては一度も敵と思ったことはありません。ただ、調子の良いところがあるので、どちらにつくか読めないというのはありますよね。
――はりつめた中で“遊び”のあるシーンもありましたが。
結果的には、正信の言葉がきっかけで、百地に殿の強い意思を届けることができ、難を逃れました。殿が解放された時、みんながほっとして少し落ち着いた空気も流れましたが、半蔵としてはまだ牢屋の中にいるので100%安心は出来ないし、伊賀を越えて、殿を安全な場所にお連れしなければならないという、まだ気が抜けない状況でした。
そんな中、みんなの視線が正信から外れて殿に向き出した瞬間に、松山(ケンイチ)くんが、僕を見てニヤリとしながら、そこら辺にあるものを掴んで懐に入れ始めたんです(笑)。カットされる可能性もありましたが、コメディ要素として成立させるためにも、僕はそれにリアクションしなければならない。その時は、声を出さずに「やめろ!」と目でやり取りしましたけど(笑)。そんな場面もありました。
――第29回の殿から「おぬしも今日から立派な武士じゃ」という言葉を半蔵をどのように感じたと思いますか?
正直、半蔵は自分が武士か忍びかということに対して、強いこだわりは持っていないのではと思っています。これまで度々登場した 「忍びだろう」と言われて「いや武士だ」と返すシーンは、ある意味いじりやネタでもあるじゃないですか。半蔵としては「みんなが忍びとしか見てくれない」とネガティブには捉えていないと思っていました。
でも第29回の最後、殿から「おぬしも今日から立派な武士じゃ」という言葉をもらう場面は、ドラマ的には殿から認められるシーンでもあるので、印象的なせりふにするため、芝居の中で感情を組み立てていきました。周りのみんなは、無事浜に着いて笑顔ですが、半蔵は殿のお命を危険にさらしてしまったことを深く反省していて、自分は腹を切らねばならない位の状態だと思い詰めている、という様に。本番でもみんなの輪に入らずにぶつぶつ独り言を話したり、気持ちを積み上げて演じました。
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