「季節のない街」で演じるかつ子は、母(小田茜)と折り合いが悪く、叔父(岩松了)と叔母(広岡由里子)と共に暮らしている。口数はあまりにも少なく、表情も豊かとはいえないが、眉間の間隔や、鼻の膨らみで、今の彼女がどんな心境なのかを見抜く者は確かに地域の中におり、それが酒販店の息子・オカベ(渡辺)である。
なぜそんな高度な芸当ができるのかというと、かつ子に好意を寄せ、見とれているから。友人たちも彼の恋心を応援している。かつ子自身は「凪のような人」である、そんな印象を私は持っているのだが、彼女の身内には何かと物騒なキャラクターがそろっていて、どうしても巻き込まれてしまうから、時に驚くような行動にも出たりする。
だが、それでもオカベはかつ子が好きなのだ。ギターを抱え、彼女の横で弾き語った曲は「春夏秋冬」。“季節のない街”という言葉も、歌い出しで出てくる。かつ子もこの歌が好きだったようで、ごく自然に、オカベの歌にハモリを重ねていく。このとき間違いなく、かつ子の心は開かれ、協調モードに入っていたはずなのだ。
このかつ子の歌が「歌手・三浦透子」の良さがしっかり出たものであることも私をうれしくさせた。以来、映画「天気の子」挿入歌のRADWIMPSとのコラボレーション楽曲(『グランドエスケープ feat.三浦透子』など)や、アルバム『点描』を聴き返す時間が続いている。今後も女優と歌手、二刀流での活躍を楽しみにしたい。
◆文=原田和典
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