――今回のドラマアカデミー賞では、夫・涼太役の東出昌大さんが助演男優賞を獲得しました。間近でみていて、東出さんの怪演はいかがでしたか?
涼太みたいな役は、私みたいな平均的な考え方をする人間には絶対に演じられない。まさに東出さんでなければできない役だろうなと思う瞬間がたくさんありました。今回、初めて共演させていただきましたが、東出さんという人をひと言で表すのは難しい。すごく大人びているような面もあれば、すごく弟っぽいときもあり、いろんな面を持ってらっしゃいます。
――東出さんとの共演で、印象的なシーンやせりふはありましたか?
私が一番「えっ」と思ったのは、涼太がそばを作ってくれて、美都が「(あなたの子じゃない子を)妊娠したかもしれない」と告げる場面。「僕の子として育てる」と言う涼太に、「あなたは頭おかしいよ」って言ったのに、涼太は「そうなの? でも、そばは食べるでしょ」と答える。そこで私の中でも「涼ちゃんはありえない」となりました(笑)。あれはすごいインパクトでしたね。そのときだけは100パーセント美都に共感しました。あのセリフを普通に言った東出さんはすごいと思いますし、毎回、演技を熟考した後で現場に入ってらっしゃる。カメラの前での見せ方をすごく意識されていると思いました。
――作品全体で、印象に残っている場面はどこでしょうか?
第4話、陶芸教室で有島の奥さんの麗華(仲里依紗)と赤ちゃんに出くわす場面ですね。美都にとって“有島くん”との恋は、中学生のときのままだったんです。楽しくて甘酸っぱくていつもウキウキしていた。奥さんがいるのは分かっていても、姿が見えないから純粋に恋を楽しんでいたのに、そこで奥さんを見てしまって、美都の中で何かが湧き上がってくる。「あ、有島くんには家庭があって、家庭にはこの人がいるんだ」ということが、急に現実感を持ったんだと思います。そして、そこから美都は暴走を始めるわけですが、それまではお花畑にいた彼女が急に生々しく、女性のちょっと怖いところを出してくる。自分で演じながらも、あのシーンがすごく印象に残りました。
――その不倫の恋が話題になり、視聴率が上がっていきましたが、芸能スキャンダルで不倫が騒がれている時期だから、ドラマがなおさら注目されたという分析もあります。そういった実感はありましたか
そうですね。放送は4月クールでしたけれど、出演の話は1年前ぐらいからいただいていたので、ちょうど世間では不倫が大騒ぎのころでした。ドラマのことを身近な人に話したら、「タイミング的にも内容的にもすごいね」と言われました。でも、私は不倫したことも不倫で人から傷つけられたこともないから、どこか他人事みたいな感覚だったんですよね。
――SNSなどでは、不倫する美都に対する意見もアツく語られました
今回、先輩の女優さんや知り合いのスタッフさんから「ドラマを見ているよ」と言われることがすごく多かったんです。一般の視聴者の方は美都に「(不倫する方向の)そっちに行くな。あー、行っちゃった…」と思って見てくださっていたけれど、テレビ業界の人は「美都、もっと間違えろ、もっと変な方へ行け」と思いながら見ていて、実際にそっちに行くから面白くてしょうがなかったらしいです(笑)。最近見ないタイプの内容なので、珍しかったのかもしれないですね。
――今回、波瑠さんが美都役を演じて、最終的に感じたことはどんなことでしょうか?
とにかく美都役を楽しみました。男性に好かれる、男性が話しかけたくなるような女性なので、そのあざとさを表現するために、こういうことをやれば見ている人をちょっとイラッとさせたり、ズルい感じに見えたりするんだといろいろ考えました。わざと首を傾げてかわいらしさを出してみたり、見ている人が「うわーっ」と引いてしまうようなことをあえてしようと意識しましたね。それが面白かったと同時に勉強になりました。そうして自分なりに工夫して演じた役で、このような賞もいただけて、ドラマの反応もたくさんいただけたので、本当にありがたいです。心からそう思います。
はる='91年6月17日生まれ、東京都出身。O型。連続テレビ小説「あさが来た」('15-'16年NHK総合ほか)でヒロインを務める。また、'14年にテレビ朝日系で放送された連続ドラマ「BORDER」の続編「BORDER2 贖罪」('17年放送予定)への出演が決定している
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