現実の出来事に心が揺れがちな今日この頃。せめてドラマを見ている間だけでも、ホッとしたくて、「あたたかいドラマ」を3つ選んでみました。
ふたりきりで暮らしてきた父・雅彦と娘・瞳。元旦にお互いの報告したいことを「せーの」で同時に言い合うと、娘は「3カ月後に結婚します」父は「3カ月後に死にます」……。がんだけど積極的な治療は受けないと言い張る雅彦を説得したい瞳。瞳の相手が10歳も年上の子持ちで売れない芸人と知って大反対する雅彦。暗くなりそうな題材なのですが、父娘やふたりを取り巻く人々の会話のテンポが心地よく、ふふっと笑って見ています。そして映像がとても美しい。死が間近にせまる状況になっても、家族や友人と口喧嘩したり笑い合って過ごしたいし、世界は美しいと思いながら日々を送れたらいいなあと、ドラマを見ながら思っています。3カ月後の春、父娘はいったいどうなっているんだろう。
「料理は科学です」が口癖の料理人・ありすは自閉スペクトラム症のため、苦手なことやできないことがいろいろある。けれど彼女の店「ありすのお勝手」では、天才的な料理の腕を発揮。ありすが小窓から客の様子を見て、その人の健康や精神状態に合わせて提供する料理はどれもおいしそうで、見ているとすごくお腹がすきます。店のバイトとして住み込むことになった謎めいた青年・倖生は、ありすのこだわりに戸惑いながらも合わせようとまじめに努力。ありすの父・心護も、店を手伝うありすの親友の元ヤンの和紗も、街の人たちも暖かく、優しい世界だなあ……と思っていたら、ありすの過去には、何か秘密があるようで。優しい温かさだけじゃなく、ミステリアスなスパイスが効いたお料理のようなドラマになっています。
ある事故をきっかけに、目を合わせた相手の考えがわかる能力を得た、会社社長の侑里。その力を会社経営のためにうまく使える時もあるけれど、知らなくてもいい相手の気持ちを知ってしまい、つらくなることもある。ある日、韓国人留学生のテオと知り合い、ストレートに好意を向けてくる彼にとまどって目を見ても、彼の心の声は韓国語だから、理解できない。なんとももどかしいふたりの恋はどうなるのか。侑里を演じる二階堂ふみさんの、年下の男の子のアプローチにあわてるコメディエンヌぶりがかわいらしく、テオ役のチェ・ジョンヒョプさんの、子犬のようなキュートな顔で熱い恋心を語るギャップにドキドキ。ふたりを見ているだけでハッピーになれるドラマです。
■文・イラスト/渡辺裕子
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