人気落語家・春風亭一之輔「野心あったら、落語家になっていなかったかも」

2017/08/21 17:14 配信

バラエティー インタビュー

「この番組をきっかけに、多くの人が落語に興味を持ってくれれば」と語る春風亭一之輔(C)NHK


NHK Eテレでは、「落語ディーパー!~東出・一之輔の噺(はなし)のはなし~」を4回にわたって放送中(7月31日、8月7日、21日、28日、夜11:00-11:30)。落語の楽しさと魅力を分かりやすく伝える同番組では、東出昌大と真打ち・春風亭一之輔、二ツ目・柳亭小痴楽柳家わさび立川吉笑と落語研究会出身の雨宮萌果アナウンサーが落語トークを繰り広げる。

8月21日の放送では、一之輔が古典落語の一つ「お菊の皿」を披露する。収録を終えた一之輔にインタビューを行い、番組の見どころや落語の魅力などを語ってもらった。

落語は足湯みたいなもの!?


――この番組で初めて落語に触れる方もいると思いますが、落語を一言でいうとどういうものですか?

落語って足湯です(笑)。よく言うのは、人は癒やしを求めて温泉に行って、お湯に漬かるじゃないですか。でも温泉に行くのは、宿を予約したり、お金もかかるし、いろいろ大変ですよね。

温泉ほど気を張らない、足湯くらいのものだと思って漬かりに来てもらえばと。嫌になったら、すぐに出ればいい。足を拭いて靴を履いて、どっかに行っちゃえばいいんですから。ちょっとだけでいいから、「文庫本でも持ちながら漬かろうかな」みたいな感じで聞いてもらえればと思いますね。そして、この番組をきっかけに、寄席などにも来てもらえればうれしいです。

【写真を見る】一之輔は、この時期にぴったりな古典落語の一つ「お菊の皿」を披露する(C)NHK


――小学校の5年生の時に初めて落語をやられたということですが、落語家になって良かったと思うことはありますか?

良かったと思うことは、満員電車に乗らなくてもいいってことですね。それから、昼間からお酒が飲める時もあるのでいいですね(笑)。

一人で高座に座って、一人のおしゃべりでお客さんをどっと笑わすって状況は、お芝居とかで企画してもなかなかないと思うんです。そういう状況を得られたときは、何物にも代えがたい喜びみたいなのはあります。

――逆に大変なことや不満はありますか?

福利厚生がない(笑)。それから、有休があればいいと思いますね。でも、自分が好きでやっている事なので、「休みがない」って不満は言えないですね。趣味と仕事が一緒になっちゃっているところがあるので、楽しいです。僕、普段からこういう(脱力系の)テンションなので、実は疲れているようであまり疲れていないんです。だから、「疲れてる?」って聞かれても、「いつも通りですけど」と答えています。

――普段からあまり疲れないテンションで過ごしているとおっしゃいましたが、高座に上がって、まくらから本題に入った瞬間のスイッチの切り替わりが個人的にすごいなと思います。

まくらは、基本いつもと変わらない感じでしゃべっているんです。じゃないと、ペースがつかめないんです。僕はお客さんになんとなく自分という人間を分かってもらってから、本題に入っていく感じです。

「野心はありそうでないんです(笑)」と意外な一面を明かす(C)NHK


――いつも高座に上がる前にやっている事はありますか?

楽屋のテンションのまま、高座に上がろうとは思っていますね。だから、無理に発声練習をしたり、気合を入れたりはしません。舞台の袖で前座さんとかとしゃべっていて、そのまま「どうも!」って感じで高座に上がります。毎回、そういう意識でやっています。

――しゃべる上で気にしていること、大切にしていることはありますか?

落語は伝統芸能ですから、最初は師匠から教わった通りにやるっていうのを大事にしています。だから、最初はコピーですね。ずっとコピーではいけないという壁にぶつかって、どんどんどんどんしゃべってなじんでくると、自分の言葉でしゃべるようになるんです。「この人はこういうせりふを言うかな?」とか、「自分がこの人物だったら、こういう言い方をするんじゃない?」とか意識して、自分の言葉で落語をしゃべるようにしています。