霊能力者の石黒賢“黒田”が一世風靡…30年の歴史を感じるオカルト番組ブーム<古畑任三郎>

2024/07/04 18:00 配信

ドラマ レビュー

警部補・古畑任三郎(第1シリーズ)(C)フジテレビ/共同テレビ

古畑はスプーン曲げをしながら犯人を追い込んでいく


人気ドラマの名作は、何十年という時を経て鑑賞しても、古臭さをあまり感じないことが少なくない。当然、電話やパソコンなど小道具の一つ一つに歴史を感じたり、登場人物のファッションなどに懐かしさはあったりするが、セリフ回しの小気味良さだったり、ストーリーの伏線回収が高クオリティでまとめられていたりすると古さは気にならないものである。「古畑」シリーズも熱烈ファンの存在が多い作品で、“何度見ても面白い!”、“30年前とは思えない傑作”と名高いが、今回紹介する第9話だけはどうしたって今見ると一昔前の時代だと思ってしまうだろう。

というのも、放送された1994年は70年代から徐々に始まったオカルト番組ブームがまだ続いていたころ。霊能力者が行方不明者を探す企画や、心霊写真、UFO、未確認生物、超常現象、ノストラダムスの大予言、都市伝説など、ありとあらゆるオカルトをテーマにした番組がたくさん放送されては消えていた時代だ。今見れば、うさん臭い雰囲気の番組もあったであろう。

「殺人公開放送」の黒田も、霊能の力が舞い降りてくる瞬間には汗をダラダラかいて、床をはいずり回り、息も絶え絶え「僕が頭の中で見た景色です…」などと殺人現場の様子を言い当てる。神宮に「役者になりなさい。名演技だ」と冷めた目で言われるくらいの“熱”が入っている。この空気感というのは、令和のテレビ番組には皆無。とても古臭い。しかし、もちろん、古さを感じたとしても古畑の推理やキャラクターのおかげで今見ても十分面白い。

黒田にスプーン曲げをさせながら犯行の疑惑を畳みかけていく古畑の姿だけでも、あのオカルト全盛の時代にしか作れないドラマだったなと感じる第9話である。