<古畑任三郎>殺した人間が生きていた…小堺一機が平静を装う犯人を演じた第10話

2024/07/05 18:30 配信

ドラマ レビュー

警部補・古畑任三郎(第1シリーズ)(C)フジテレビ/共同テレビ

気弱で隠ぺい気質な秘書の末路


ずっと尽くしてきたワガママな人間に、とどめの一発を刺されたらカッとなって殺意が芽生える。こんな気持ちを分かるときもあるのが人間の恐ろしいところ。

今回の犯人・佐小水はまさに一瞬の殺意で人生が狂ってしまったようなタイプの本来真面目な男で、古畑が彼の発言の矛盾を追い込んでいく様子は気の毒にさえ見えた。宇野という議員は、公私共に佐小水を頼り切って甘えて暮らしていたことが分かる。愛人の殺害後も佐小水に責任を押し付けただけでなく、「ピザとっていいか?」「コーヒー飲みたいな」などと人が目の前で死んだ直後とは思えないワガママぶりで、佐小水が不満を募らせていたのも無理はない。

どこまでも他人の尻拭いをさせられる人生を歩む佐小水。この話は、頭を殴られた宇野が実は死んでいなかった、と分かる場面から面白さに拍車がかかる。手術は成功した、と聞いた佐小水が恐る恐る病室をのぞくと、今朝、痔の手術をしたばかりの今泉が寝ていたり、意識は戻ったが事件当時の記憶が抜け落ちていると聞いたときに思わずご機嫌になってしまったり、佐小水の焦る感情が刻一刻と変化していくのが滑稽だ。

ベッドに横たわる宇野から「いろいろすまなかったな、迷惑をかけた。おまえほど有能な秘書はおらん」と聞いた佐小水。感謝の言葉なんて聞いたことがなかっただろう男が、さらに犯罪を犯そうと追い込まれていく流れは痛ましさを感じた。「顔色が悪いですよ大丈夫ですか」と畳みかける古畑の底意地の悪さは視聴者の笑いを誘うだろう。