ホ・ヨヌ「世子様に会えてとても幸せでした」 宮廷の謀略に巻き込まれた者たちの悲哀うずまく第5話<太陽を抱く月>

2024/09/21 12:00 配信

ドラマ レビュー

宮廷の謀略に巻き込まれた者たちの悲哀うずまく第5話※提供画像

キム・スヒョンが主演を務める韓流ドラマシリーズ「太陽を抱く月」(Huluにて配信中)。2012年に全20話が放送された大人気ドラマシリーズである同作は、朝鮮王朝の架空の時代に繰り広げられる宮中ラブストーリーを描いた作品だ。第5話では順調にイ・フォン(子役:ヨ・ジング)と絆を育むホ・ヨヌ(子役:キム・ユジョン)が、外戚組を率いる大王大妃(テワンテビ)・ユン氏(キム・ヨンエ)の謀略に巻き込まれてしまう。(以下、ネタバレを含みます)

ユン氏によって迫られていたチャン・ノギョンが出した決断とは


世子の婚約者である“世子ピン”として迎えられたホ・ヨヌは、さまざまな儀礼・作法の習儀(前もって練習すること)を繰り返す毎日を過ごしていた。お辞儀をする際に揺らさない、弓のように体を曲げつつ頭を下げない…など、世子ピンとしての礼儀作法は覚えることも慣れることも多く難しい。そんななかでも、イ・フォンからの差し入れに忍ばされていた文に励まされつつ、ホ・ヨヌは努力を重ねていた。

ある夜、チャン・ノギョン(チョン・ミソン)は大王大妃・ユン氏の命によってある呪術の準備をおこなう。実は彼女、ユン氏から「ホ・ヨヌを始末しろ」という命令を下されていたのだ。ユン氏によって用意されたホ・ヨヌの生年月日が書かれた紙と彼女の服を手に、真剣な面持ちで手を合わせるチャン・ノギョン。静かに儀式が進んでいく。

火を起こしていた壺から、やがて黒い煙が巻き起こる。部屋中を周り回った煙は、屋敷を飛び出してホ・ヨヌの部屋へ。扉の隙間から忍び寄った煙がホ・ヨヌの首に巻きつくと、彼女は苦しみながら手を伸ばす。しかし声も出せない彼女は、誰に気付かれることもないまま意識を失ってしまうのだった。

「訃報はいつ聞ける?」と問うユン氏に、「それは私の力では何ともできません。本来、命を一瞬で奪う呪術は存在しません」と答えるチャン・ノギョン。「原因不明の病を患い、命が尽きるでしょう」と答えた彼女に、ユン氏は「急死されると疑われてしまうからな。好都合だ」と納得の表情を見せる。しかしそのうえで、チャン・ノギョンに「適切な時期に息が絶えなかったら、お前が手を下すのだ」と恐ろしい指示を加えるのだった。

部屋を出たユン氏。扉の前には、震えるミナ王女が立っていた。落ち着かないようすのミナ王女に、ユン氏は笑顔で「恐れているのですか?もう終わりました。ご心配なく、王女の願いは叶えられるでしょう」と微笑んだ。ホ・ヨヌの兄ホ・ヨム(子役:イム・シワン)に恋するミナ王女。ホ・ヨヌとイ・フォンが結ばれれば彼女の想いは叶わない。怪しく笑うユン氏の前で、幼いミナ王女はか細く息を繋ぐ。

ホ・ヨヌが倒れてから数日、ソンジョ(アン・ネサン)のもとではさまざまな意見が交錯していた。ホ・ヨヌの病状が回復しないことから、長年の持病を得てしまったのだと考える意見。ほかにも病気が広がることを恐れてホ・ヨヌを追放し、“持病を隠していた”と思われるホ・ヨヌの父や兄にも罪を問うべきというものもあった。他には世子ピンであるホ・ヨヌ治療を続行すべきという意見も存在したが、最終的にソンジョが選んだのは前者…ホ・ヨヌを追放する道だった。

すぐさまホ・ヨムは宮廷から追い出されることになり、感染の恐れがある荷物は焼却すると宣告。ホ・ヨヌは病も治らないまま宮廷から連れ出されてしまう。そしてそんな事情を知ったイ・フォンは必死に彼女のもとへ向かおうとするが、武官たちが立ちふさがってそれも叶わない。涙ながらに「私の妃だ!」と叫びながら伸ばした手は届かず、目の前でホ・ヨヌは宮廷を去っていく。

イ・フォンの悲痛な叫びが響く


ホ・ヨヌが連れて行かれるのを見ていたイ・フォンは、ユン氏に呼び出されて2人で話をすることに。ホ・ヨヌのことを忘れてくださいと言われたイ・フォンは驚きを隠さずにいたが、ユン氏は王室の安全のために“道理を守る”ように諭す。

たとえばホ・ヨヌはカンテクされなければ病気を患っても親に看病されて気も楽に休めたはずだと重ね、「世子の行動により誰が幸せになりましたか?あの娘の不幸は世子のせいです」とイ・フォンを縛っていく。ホ・ヨヌの父、兄の失脚についてもすべて世子のせいだと語った上で、道理に背けば災いを生むため「下手に動いてはなりません。さもないと――傷を負います」と言い聞かせるのだった。

ホ・ヨヌの体調は、宮廷から家に戻っても改善していなかった。内臓も脈も正常であるのに、何かにとりつかれたように苦しんでいるホ・ヨヌ。30年の経験のなかでもはじめてのことだと、家を訪れていた医者が語る。ホ・ヨヌの母、シン氏までもホ・ヨヌを心配するあまり体調を崩し、途方に暮れたホ・ヨンジェ。彼が夜に屋敷の前を歩いていると、そこにチャン・ノギョンが訪れる。

チャン・ノギョンは自身の身分を明かしつつ、霊力によって導かれたと語った。国巫である彼女から、ホ・ヨヌの容態を見せてほしいと言われたホ・ヨンジェ。彼女をホ・ヨヌの部屋へと招き入れると、自身の呪術で苦しめているホ・ヨヌを見て「彼女は巫病です」と重々しく告げた。巫病とは、巫女になる過程で訪れる症状…つまりホ・ヨヌの症状は病ではないという言葉だ。チャン・ノギョンが巫病の治療法として提示したのは「神降ろし」だった。

ある日、宮廷で大きな陳情が起きる。宮廷の前で世子ピンを代え、国の安定を守るようにというものだ。多くの書状がソンジョに届き、宮廷前では多くの者たちが声を上げている。イ・フォンはユン氏の仕業だ見抜いて飛び出そうとするものの、従者のヒョンソンは必死に制止。愛していたホ・ヨヌも、師として尊敬していたホ・ヨムも、兄であるヤンミョングン(子役:イ・ミノ)も宮廷にはいない。残っている味方など…とこぼしたイ・フォンは、ふと何かに気付く。

イ・フォンが足を運んだのは、キム・ジェウン(子役:イ・ウォングン)のもとだった。玉蹴り大会でのことを口実にキム・ジェウンともう1人を呼び付け、イ・フォンの部屋へと招き入れる。彼らに服を交換するよう持ちかけ、イ・フォンはキム・ジェウンとともにホ・ヨヌのもとへと向かった。

イ・フォンは病に伏せるホ・ヨヌを見て涙を流す。イ・フォンの姿を見たホ・ヨヌから「本当に世子様ですか?」と問われ、「幻ではない。私は本物だ」と涙ながらに答えるイ・フォン。そして包みのなかから金色のかんざしを彼女の手に握らせる。

「なんですか?」と問うホ・ヨヌに、「"太陽を抱く月"だ」とイ・フォンは微笑む。白い月が赤い太陽を抱いている意匠のかんざしを、イ・フォンはそう名付けた。王は太陽であり、王妃は月だと呼ばれていると語り、「私の王妃はお前だけだ」と優しく笑う。

早く元気になって戻るようにと元気づけるイ・フォンに、ホ・ヨヌは静かに謝る。初めて出会った日に泥棒と思ったこと、誤解してしまっていたことを深く謝り、その上で悪いのはすべて自分であり、イ・フォンが自分を責めるのはやめてほしいと言うのだ。さらに「世子様に会えてとても幸せでした」と美しく微笑んだホ・ヨヌに、イ・フォンは涙を浮かべながら「もっと幸せになる。そう言うな」と元気づける。

ホ・ヨヌの屋敷から戻る際、イ・フォンはヤンミョングンやホ・ヨヌがキム・ジェウンを呼ぶように「ウン」とあだ名で呼んで良いかと問う。キム・ジェウンが「恐縮です」と応えるのを聞くと、イ・フォンはホ・ヨヌが苦しんでいるのに何もできないことを苦しんでいると告白。世子であるのになにもできず、世子であるがゆえに何もできない無能なのだと涙を流すイ・フォンを痛ましく見つめつつ、2人は宮廷へと戻っていく。